12,000円のアフタヌーンティー

アフタヌーンティーのスイーツたち。濃厚なチョコレートやさつまいものタルトなど、素材と技法にこだわり抜いた逸品ばかり

今回のヨーロッパ旅行で娘から頼まれていたことがひとつだけあった。ロンドンで本場のアフタヌーンティーを体験することだ。

私たちはアイルランドにいる娘のホストファミリーから勧められたロンドンのホテルで、アフタヌーンティーを予約した。

皇室御用達の一流ホテルや、同等ランクのアフタヌーンティーは数カ月先まで予約で埋まっており、私たちがようやく席を確保できたのはジュメイラ・カールトン・タワーというホテルのアフタヌーンティー。

味の違うミニスコーンは、それぞれ付けるソースも違う。ふた口で食べられる量だが、1人4個となると結構なボリューム

1人75ポンド(約12,000円)というのはロンドンのアフタヌーンティーの相場のようだ。そんな高級コースが何ヶ月も先まで予約でいっぱいなんて……。

ここでもロンドンの景気のよさを目の当たりにした。

洗練されたホテルのレストランで、ウエイターに案内されて席に着く。エレガントなテーブルクロスにつややかなナイフやフォークが並んでいる。

ウエイターは椅子を引き、にこやかにケーキやティーの説明を始める。

最初に好みのお茶を選ぶ。お茶は何度でも何種類でもおかわりができる。メニューには意外にも台湾の烏龍茶があった。

実は深煎りの烏龍茶は紅茶と製法が似ていて、上等な烏龍茶ほど、紅茶に似た風味を持つ。

お茶を飲みながら、4回から5回に分けて運ばれてくるスイーツをゆっくり味わう。最初のケーキのあとは、口直しのシャーベット。

次にスコーンセットが出てきたら、また口直しのタルト…というように、口直しのスイーツを挟みながら至福の展開。

1品はどれも小さいのだが、ケーキだけでなく、クロワッサンのサンドイッチなど食べごたえのある軽食も含まれるので、3時間のコースを終えるころには食べ物と水分でお腹がふくれる。夕食はとても食べられそうにない。

食べ切れないスイーツは持ち帰ることができると知ったのは、店を出た後だった。それがわかっていれば、無理して食べきろうとせず夕食のスペースを残しておいたのに……。

アフタヌーンティーといえば段になったスタンド。次はどれを食べようか? 選びながらテンションが上がる

イギリスへ行ったことを日本人に話すと、「食べ物がおいしくないでしょう?」という反応をする人がとても多い。

確かにアジア諸国やイタリアに比べると食べ物の種類が豊富とはいえないかもしれないが、それなりの投資をすればおいしいものに出合える。

イギリスといえばフィッシュアンドチップス。ポテトもソースも、やはり本場はうまい!とうなる一品

アフタヌーンティーはイギリスが世界に誇るおもてなしだ。1人1万円も出せばおいしいのは当たり前、という声が聞こえてきそうだが、繊細に作り込まれたスイーツやサンドイッチは、口当たりから残り香までどれもうっとりするような質の高さだ。

口に運ぶ順番や紅茶との相性まで、すべてが計算されている。

さらには、ソファの座り心地やウエイターの所作の優雅さまで期待をはるかに上回る。

ロンドンのシアターでミュージカル『となりのトトロ』を鑑賞

ミュージカル『マンマ・ミーア』を上演するウエストエンドのミニシアター。これくらいの規模のシアターがウエストエンドには約40軒集まっている

ロンドン旅行の大きな楽しみのひとつが舞台鑑賞だった。ロンドンにはニューヨークのブロードウェイと並ぶ、ウエストエンドというシアター街がある。

小さな劇場が日々ミュージカルや芝居を上演していて、きらびやかなネオンが灯されたシアターの前には行列ができ、活気にあふれている。

私と娘が訪れたのはバービカン・センターというビジネス街にある由緒正しき大型シアター。ここでなんと日本人によるミュージカル「となりのトトロ」が上演されていた。

もちろん、日本でチケットを予約したのだが、バービカン史上最速のソールドアウトらしく、奇跡的に手に入れたチケットだった。

イギリスでも日本の “Totoro” は大変人気があり、ミュージカルはスタンディング・オベーションの大絶賛の中で幕を閉じた。

コロナが収束に向かい、2022年は日本でも劇場やライブに客足が戻った年だったが、ロンドンの劇場でもその活気や上向きの景気を体験することができた。

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。