ナポリから夜行フェリーでシチリア島へ
初めて日本を訪れる外国人が「4日間しかないんだけど、北海道と、東京と、京都と、福岡に行って、最後は沖縄に寄りたいんだ」と言ったら、絶対にやめておけと言うだろう。
私は初めて訪れるイタリアで、まさにそれをやろうとしていた。
まずはベネチアを歩き、フィレンツェで美術館を巡り、ローマで世界遺産を見て、ナポリでピザを食べ、最後はシチリア島へ。初心者にありがちな、欲張り弾丸旅行である。
イタリアを訪れても、シチリアまで足を伸ばす日本人旅行者は少ないようだ。
他の都市と比べてアクセスがわるく、治安もあまりよくないイメージがあるからだろう。
けれど、『ゴッド・ファーザー』と『ニュー・シネマ・パラダイス』が大好きな映画ファンにとってシチリアはあこがれの地。なんとしても行ってみたい。
だが、鉄道だと5時間以上かかると聞いて考えてしまった。移動に時間をかけるのはもったいない。ならば、ナポリ港から夜行フェリーで行くのはどうだろう?
10時間かかるが寝ているうちに移動できるし、宿代が浮く。決めた!
ナポリでピザを食べ、ポンペイで遺跡を見てから、夜8時出港の大型フェリーに乗り込んだ。
フェリーの寝室にはさまざまなタイプがあるが、私と娘は窓付きの2人部屋を選択。
ツインベッドにユニットバスまで付いていて快適だ。これで1人1万円くらいならわるくない。
船内はなかなか豪華で、広々としたラウンジやバー、カフェ、ゲームセンターやキッズルームなどが完備されていた。
カフェでも簡単な食事ができるが、その他にリーズナブルなセルフサービスの食堂と、ウエイターがオーダーを取ってくれる高級レストランがある。
船が動き出す前から興奮して船内を探索し、ちょっと贅沢にレストランで食事をすることにした。
船上レストランで食事を取る人は少ないようで、客はまばらだ。
料理は予想以上に美味しかった。
アルデンテのパスタには魚介の濃厚なダシがよく絡んでいた。食事が終わったら部屋に戻って寝るだけなので、ついついワインをおかわりしてしまう。
10月のイタリア南部はまだ蒸し暑く、半袖でも十分過ごせるが、フェリーの甲板に出ると冷えるので羽織るものが必要だった。
夜空に浮かぶ明るい月が真っ黒な海面に静かに反射している。そんな幻想的な風景を見ながら、ゆっくりとシチリア島へ向かった。