南の島の朝市
シチリアは魚介類が豊富。スーパーでも主役は魚屋さん。生で食べることはせず、煮込んだり、炒めたり、パスタにしたり
イタリアは北部のベニスからフィレンツェ、ローマ、ナポリと徐々に南下するほど気温が高くなり、人々の服装や笑顔も軽やかになる。道路のゴミが増える代わりに、店先や市場で行き交う声がにぎやかになる。
シチリアへ着いてすぐ、朝市へ向かった。アジアの国々を訪れるとかならず市場へ足を運ぶが、イタリアではまだチャンスがなかった。
どの国でも市場は南へ行くほど楽しい。地元野菜の種類が豊富になり、緑も濃く鮮やかになるからだ。
ナポリにも魚介や野菜を扱う市場があり、地元の買い物客で賑わっていた。
シチリアには地元の人々が食材を買う市場もあるが、観光市場も充実している。
さすがはヨーロッパきってのリゾート地だ。
市場の入り口に立つと、呼び込みの若者たちが声を張り上げている。
何を言っているかまったくわからないが、細い通路の両脇には美味しそうな惣菜がずらり。
つややかなナスに真っ赤なトマトソースとチーズを絡めた料理や、ポテトサラダをオイル漬けのイワシで巻いたロール、タコとジャガイモのオリーブオイル漬けなど、どれも食欲をそそる品ばかり。
さっそく手近な店の前のテーブルに座り、おかずを頼んでからイタリアの地ビールと一緒にいただいた。
シチリアは魚介が豊富だが、レモンやオレンジの柑橘類も有名だ。オリーブオイルでさっと炒めた魚介にレモンを絞るだけで、うなるほど美味しい。
シチリアには地元民向けの生鮮市場や観光客向けのグルメ市場がたくさんある。こちらは料理を選んでプレートに盛ってもらい、テーブルで食べるシステム
アパートメントに泊まり、市場で買物して朝ごはんを作る
シチリアではキッチン付きのアパートメントに泊まったので、朝食は自分たちでサンドイッチを作ろうと、近所のスーパーに買い出しにでかけた。
チェーン店だが、チーズとハムのコーナーは日本以上に充実している。
カウンターの奥にはかたまりのハムやチーズがずらりと並んでおり、必要な量だけカットしてもらうシステムだ。店員のおじさんに英語で「チーズとハムのスライスを2〜3枚欲しい」と言ってみたが、まったく通じない。
ゆっくり英語でしゃべってみても、まるでダメだ。
チーズとハムは諦めようとしたとき、娘が果敢にも進み出て、さらに身振り手振りを加えて「チーズをスライスしてくれ」と頼み始めた。
一生懸命話そうとする姿勢を見せると、相手も耳を傾けてくれる。
娘は買い物かごに入れたパンを見せて「サンドイッチ、チーズ、カット」と英単語を並べる。
そこへ、買い物中の親切なイタリア人カップルが現れた。
英語が話せるようで私たちと店員のおじさんとの間の通訳を買って出てくれて、さらにおすすめのハムの紹介もしてくれた。これぞ旅の醍醐味。
市場の精肉・加工肉ブース。サラミは種類が豊富で、薄くスライスするだけでワインのつまみに
スーパーのチーズコーナー。買い物中の地元のカップルに助けてもらい、朝食のサンドイッチ用のチーズを無事購入
地元のスーパーで買い物をして、イタリア人に買い物を手伝ってもらいながら自分で朝ごはんを作れるなんて得難い経験だ。
通訳してくれたカップルのおかげで、翌朝の朝食はかなり贅沢なものになった。
宿泊したシチリアのアパートメントはキッチン完備。基本的な調味料や料理道具も用意されている。この他に寝室とシャワーやトイレなどもあって広々
カップルに教えてもらった生ハムwith梨スライスは味覚の世界が広がる組み合わせだった。
ハムとチーズをパンにはさみ、オリーブオイルと塩で味付け。地元民気分の朝ごはん
ネットの動画やSNSでいくらでも海外の情報は入ってくるけれど、自分の足で歩き、人と話す体験は一生の宝物だ。
映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の舞台となったチェファルーという街。滞在したパレルモから列車で行ってみた。赤茶けたレンガの建物群が積年を感じさせる
シチリアのように、英語が通じにくい地方都市ほど人の優しさが心にしみる。
多くの人がシチリアに恋する理由がちょっとわかったような気がした。







































