ドラマやK-POPの聖地巡礼、ミュージカル鑑賞、語学のブラッシュアップ、食べ歩き、街ブラなど、韓国旅行の多様化が進んでいる。
それぞれの目的最優先の効率重視の旅もよいが、日韓の移動をじっくり楽しむ旅もおもしろい。
船旅レポートの後編は釜山港から大阪南港への帰路の様子をお送りしよう。
釜山港から大阪南港へ
韓国に滞在した3日半は、釜山を中心に街歩きを楽しみ、高速鉄道やバスで周辺地域まで足をのばした。
桜の開花が1週間ほど遅れたこともあって、日本にいるとき以上に花見を楽しむことができた。一緒に過ごした相棒A、Bも喜んでくれたようだ。
出港は15時なので釜山港国際旅客ターミナルには13時頃行けばよい。午前中、チャガルチ市場を散策して、釜山との別れを惜しむ。
帰りの船も夕朝食ビュッフェは予約していないので仕込みが必要だ。
韓国では食堂で出している食べ物のほとんどをテイクアウトできるが、さすがに汁物や鍋物を持ち込むのはどうかと思い、KTX釜山駅2階コンコースのオムクの店に行ってみた。
釜山には日本植民地時代にもたらされたおでんが定着していて、おでんという言葉は今も通じるが、最近は独自のアレンジが施され、名前も韓国語でオムク(練り物の総称)となり、釜山駅とその周辺には専門店がいくつもできている。
オムクのオードブル(19,200ウォン)を買い、駅構内にあるプレミアムマッコリ「福順都家」で生マッコリ(12,000ウォン)、コンビニで缶ビール、韓国餅屋であんこ餅を買う。
往路では気づかなかったが、ターミナルにはパンスタークルーズの自動チェックイン機が設置されていた。
パスポートをスキャンするだけで、あっさり発券。その日は出国審査場までの列が100メートルくらいあった。往路と比べると明らかに乗客数が多い。
乗船してデッキに出ると、英語圏の旅行者で賑わっていた。
ある者は写真撮影に興じ、またある者は開け放たれたバーでビールを美味しそうに飲んでいる。
船がターミナルを離れた。船体がゆっくり向きを変え、釜山港大橋のほうに進んで行く。
この20年間、韓国の多くの離島を旅したが、島人は来客が船で島を去るとき、見送りに来ないことが多いと聞いた。耐えがたい切なさが襲ってくるからだそうだ。
甲板から港を眺めているとその意味がよくわかる。釜山タワー、葉桜が目立ってきた山の斜面、鯨のような形状のターミナル……。
景色のひとつひとつが愛おしい。かならずまた船で来ようと誓う。