最高のキャスティングが映画を盛り上げる
――奇跡的に素晴らしいキャスティングだと思いますが、この3人の俳優の魅力はどこにあると思われますか?
ハ・ジョンウさんについては、編集室で映像を編集している間にもスタッフたちと“あまりにも似過ぎていないか?”と話すほど、ソン・ギジョンでした。
ソン・ギジョン選手の生前の映像や資料をたくさん見てきてよく知っている私たちスタッフが、話し方や歩き方、雰囲気までそっくりだと感じたんです。
それほど、ハ・ジョンウさんがソン・ギジョンにのめり込んでいたんだと思います。
イム・シワンさんには、肉体的なコンディション作り、ランナーとしての姿勢などたくさん注文をつけました。
準備期間、撮影期間のほぼ1年間にわたって徹底した断食、食事制限、運動を続けてくれて、最高のランナーになっていました。
実は、撮影が終わってからもしばらくの間、それを維持し続けていたんです。追加撮影があるかもしれないという理由で。
それほど自分に厳しい、素晴らしい俳優です。普通は撮影現場で女優の登場を待ち侘びるものなんですが、本作の現場では、みんなが、今日イム・シワンの撮影は? と言っていました(笑)。
彼が見せてくれる演技が撮る側をときめかせる、そんな楽しみがありましたね。
そして、ソン・ギジョンとソ・ユンボク、この二人が尖った木の柱のようだとしたら、二人を包み込む大地のような存在、それが、ナム・スンニョン。
1位になった人、1位になりたい人、ずっと2位3位で1位になれなかった人、3人を分ける分岐点だと思いますが、多くの人はナム・スンニョンに共感できるのではないでしょうか。
なぜなら、1位を経験する人はそんなに多くないからです。そんなあまり目立たない存在ながら全体を支えるような役割をぺ・ソンウさんが旨味の詰まった演技でうまく表現してくれたと思います。
――キム・サンホさんとパク・ウンビンさんについてもお伺いしたいです。
キム・サンホさんが演じたのは劇中でペク・ナムヒョンという名前で出てきますが、実際にはペク・ナムリョンという人物です。この方は、最初はあまり積極的ではなかったそうですが、3人と生活をともにするうちに、最終的には自分の全てを投げ打って助けてくれた人。この映画は、韓国パートの第1章とボストンパートの第2章に大きく分かれますが、第2章に移る段階のターニングポイントにおいて活力を与えてくれる人物がペク・ナムヒョンです。これまでの緊張感を少し和らげ、新しい面白さを運んでくれる、そんなキャラクターですが、キム・サンホさんが120%消化して演じてくれました。
パク・ウンビンさんが演じたオクリムは架空の人物です。当時の町には人々が集まる食堂があり、そこにはみんなの人気者がいる、そういう設定の少女でした。
――7月に開催されたプチョン国際ファンタスティック映画祭のイベントで「パク・ウンビンさんに申し訳なかった」と発言されたそうですが?
パク・ウンビンさんにというより、彼女のファンに申し訳ないという気持ちで言いました。ファンの方々は、我らが大スターのパク・ウンビンさんをなぜこんな小さな役で使ったのかと絶対に恨んでいると思ったので(笑)。