プレッシャーや不安を感じることもありました。

――監督から言われたことは?
池永についてはわりと僕に任せてくださっていて、「それでいいよ」と言われることが多かったと思います。
ただ、撮影中、監督が毎朝メイク室に来てくださって。「今日、どう?」みたいなところから始まるんです。「今日は遺書を読む日ですね」とかって話して、「こういう感じでやろうかと思っています」ということを、現場に入る前に確認してくださるので、「これでいいんだ」というものを持った状態で現場にいれたのがすごく良かったです。緊張感のある現場でしたけど、監督のおかげでいい雰囲気の中で演じられました。
――任されていたのは、監督から信頼されていたということだと思うのですが。
監督の僕に対する最初のイメージがアーティストで、当時、金髪にしていたし、池永のイメージとは全く合わないんじゃないかと思われていたと思うんです。ステージに立っている僕しか知らなかったと思うから、「(池永は)地味だけどできるのか?」みたいな。でも、本読みのときに黒髪にして行ったら、少し安心されたような顔をしていました(笑)。

――本作はたくさんの出演者たち中でお芝居をするという形だったと思いますが、そういう時、全体のバランスなど、意識することはありましたか。
自分の中で、「この人はこう来るだろうな」とか、イメージをすることはありました。でも、実際は全然、違ったりもして。「あっ、そういう感じか」って思って、みんなの出方を見ながら、現場で考えて対応することのほうが多かった気がします。
池永は自分から仕掛けるみたい部分は少ないので、そこは難しくなかったんですけど、逆に、自分が話していないときに、周りの人たちに対するリアクションを取るところは意外と難しくて。
台本には基本的にセリフや動きのある人のことしか書いていないので、リアクションの部分は監督も含めて、みんながそれぞれに考えながら作っていきました。「〇〇だったらこうするよね」とか、「もしかしたら、〇〇だったら何もしないかも」とか。そういうのを一人ひとり、監督が確認していってくださるので、それを受けて、その場で考えていきました。

――端的に言うと、人間の表と裏を描く物語だと思うのですが、この内容についてはどう感じていましたか。
言葉を選ばないと難しいんですけど、楽しいという意味ではない、面白さを感じたというか。ただ、自分はそれを演じるという立場でもあったので、そこはすごく大変だろうなと思いました。今回、座長という立場でもあったので、プレッシャーや不安を感じることもありました。
けど、監督と話したり、あとは現場の雰囲気とか、教室のセットとか、作り込もうとしなくても自然とこの世界に入れる空気感があったので、それに助けられました。周りの皆さんの迫真の演技にも引き込まれて、「自分もちゃんとしなきゃ」とも、思わされましたし。
でもやっぱり、監督が積極的にコミュニケーションを取ってくださったことは大きかったと思います。
――周りの皆さんの演技に引っ張られることもあったのですね。
それはかなり大きかったです。自分より全然、年齢が下の人たちもいて、それなのに「こんなお芝居をするんだ」というような、僕には到底できないようなリアルなお芝居を感じられたのは、すごく刺激的でしたし、学びもたくさんありました。