ギリギリの接戦! いす同士の熾烈な戦い
コーナーではギリギリの接戦が繰り広げられます。ただでさえコントロールが効きづらいイスで、後ろ向きに走る人が多いので、イス同士がぶつかったり、時には転倒したりすることもあります。
転倒の瞬間! 危ない!!
また、一見平坦に見える道路でも、実はでこぼこや傾斜があるので気を付けなければいけません。ただし、地方大会参加者によると「東京は都会だから、まだ道が整っているほう。ちゃんと舗装されているので走りやすい」とのこと。
微妙な傾斜がある“魔のエリア”。標識にぶつかりそうになる選手が続出しました。
しっかりしたものを選べば、イスが壊れることはほぼないそうですが、 レースも中盤を過ぎると、あちこちにイスの部品が落ちています。
背もたれがぼきっと折れてしまったイスも
壊れそうになるのはイスだけではありません。疲労困憊でピットに入ってくる選手たち。見た目以上の過酷さもレースの特色です。心が折れてしまいそうになる人も少なくないとか……。想像していた「キャスター付きイスで滑る」というイメージとはかなり異なります。
そんなつらい状況ですが、周りを応援団に囲まれた選手はなかなかリタイアしづらいでしょうね。そうした葛藤も見どころかもしれません。
ただ、そんな選手たちを支えるのもチームの応援です。マッサージしたり、アイシングで体を冷やしたり、イスの滑りをよくするためスプレーをかけたり、周回数やタイムを計ったり、大きな声で声援を送ったり……。
日本事務いすレース協会代表理事・田原さんによると、1時間ほどすぎると、今度は「ランナーズ・ハイ」のような「いす・ハイ」が訪れるそう。アドレナリンがでてくるのか『また頑張ろう』と思えるようになるとのこと。
残り30分を切ると、選手たちに勢いが戻ってきます。そしてラスト10分。選手はもちろん、観客、スタッフまで感動に包まれ、最後のカウントダウンは感無量、といった様子。2時間の間にドラマがいっぱい詰まったアツイレース、それがいす-1GPなのです。
来年にはまた東京大会も予定されているそう。次のレースではどのようなドラマが生まれるのでしょうか。
取材/篠崎夏美