キャストたちに脈々と受け継がれる“熱”

登場人物が増えると同時に新キャストも多数登場した今作。筆者にはキャプテン手嶋を中心とする“新生チーム総北”の姿が、新キャストを中心にまとまる“新しい一座”の姿に重なって見えた。

小野田坂道を演じる小越勇輝も、前作からの参加である意味新人座長だ。過去作で絶大な人気を誇った廣瀬智紀演じる巻島裕介や北村諒演じる東堂尽八など、卒業していった先輩キャストたちの熱量を受け継いで、それよりも熱い舞台を見せようと新キャストたちが奮闘する姿。

今作はまさに、“総北魂”が舞台の中でも受け継がれる様子を生で見せられているようだ、と思った。原作ファンはもちろんのこと、今までの舞台を継続して応援してきた人にとっても、満足度の高い舞台になっているだろうと、筆者は思う。

ストーリー的にも、鳴子のスプリンターとしての苦悩や、小野田の先輩としての成長、新しいインターハイメンバーを選ぶ中でのドラマ、2年生になって自身の壁を破ろうと努力する杉元……さまざまなドラマが盛り込まれて、見所満載となっている。

このシーン、原作コミックスでも号泣だが、舞台でももれなく号泣した 撮影:高橋妙子

特に、パズルライダーたちによるカメラワーク演出を多用した、杉元と鏑木のレースシーンはとてつもない臨場感をもって迫ってくるシーンだ。涙なしには見られない結末は必見なので、要確認だ。

新しいキャストを迎えて、さらに勢いを増した『舞台 弱虫ペダル』の一座。その勢いをぜひDVDで改めて感じて欲しいと思うのは、筆者だけではないはずだ。次回作にも大いに期待させていただく。新たなチームの快進撃を、ぜひ目撃して欲しい。

 フリーランスエディター・ライター。原宿系ファッション誌の編集者などを経て、2014年独立。ファッション、アニメ、マンガ、ヴィジュアル系、腐女子などのカルチャー分野について執筆。