各区間にどんな選手を起用するのがいいのか
■1区:早起きで賢い選手
西田:まず、朝に強い人だね。3時くらいに起きるので、それに対応できるかどうかは必要。それと絶対に外さない安定感のある選手を配置したい。区間賞を獲らなくてもいいから、先頭と20秒差以内でタスキを渡せる選手がベストかな。
M:1区は流れをつかむうえで、重要なので、エース級が配置されることが多いですよね。1区はペースが速い年と遅い年がありますので、駆け引きが上手かったり、レースの動きに対し、臨機応変に対応できる能力も必要ですね。
西田:他のメンバーより圧倒的に力の差があるなら、一人でドンっといけばいいけど、そうでなかったら、団子状態になるね。その中で、誰をマークするか、マークされているなら自分がどう動くか。賢い選手である必要もあるね。
■2区:エースだけど実は上りも得意
西田:距離も長いし、やっぱりチームで信頼感のある一番強いエースでしょうね。
M:流れをつかむためにも、大崩れしない安定感も求められますよね。
西田:さらに権太坂や中継点手前の上りもあるから、速いペースで突っ込んできて、登りも対応できる能力は絶対必要。
M:チーム内でエースって言われているけど、上りが苦手ってなると、3区に回ることが多いですね。そういうチームは2区は無難につないで3区にエースを配置してくるでしょうね。
西田:たしかに、チーム内で2番手、3番手で上りが得意な選手が2区にそろう可能性もあるね。
■3区:自分のペースを刻める安定感のある選手
M:3区は割と走りやすいコースですかね。最初は下りですし。
西田:1・2区とタスキがつながれてきて、選手もばらけてきて、単独で走ることもあるので、その中で自分のペースを作れるやペースを守れる能力は必要。そう考えると、クレバーな選手がいいかな。僕は3区で失敗しているから(笑)
M:前半の重要な区間なので、経験の少ない1年生を使うのはちょっと怖いですね。
西田:でも、力が十分にあって、自分をコントロールできる頭の良さがあれば1年生でも3区はありかな。あと、海岸近くを走るので向かい風が強いときが多いから、向かい風に対応する力も必要だね。
■4区:ギアの切り替えと後半の上りが鍵
M:小刻みにアップダウンがありますよね。
西田:そのアップダウンに合わせて、ギアを切り替えられる走りが上手い選手がいいかな。
M:今回から距離も伸びますから、上りに対応できるってことももちろん必要ですよね。
■5区:上りが得意な選手
M:もちろん上り坂が得意な選手ですよね(笑)
N:上り坂が得意な選手って、骨盤の向きとか、ガッツがあるとか、基本的な走力、色々な要素が必要だと思うけど、上り坂への適正ってあるよね。好き嫌いではなく、単純に上り坂に向いているか向いていないかを見極めることが選手選びには重要だと思うな。
■6区:センスのある選手
西田:もちろん下りが得意な選手でしょ(笑) 前半は突っ込める勇気を持てることも必要かも。
M:そうですね。あとは最後の3kmで差がつくこともあるので、ラストが強い、体幹が強い、粘り強い選手がいいかもしれません。この区間からは谷口浩美さん、川嶋伸次さん、川内優輝さんと日本代表になった選手も多くいますよね。
N:これも上り同様に、下りの適正というものがあると思う。走ること自体のセンスが高い選手がいいかもね。
■7区: 各チームの戦力が現れる区間
西田:いわゆるつなぎの区間ではあるけど、ここに強い選手を配置できたら、そのチームは相当強い。ここにエース級を置くためには選手層の厚さ必要。
M:全体的に若干下っているので走りやすいですから、経験の少ない選手が配置されることが多いですよね。それに最近は6区で一斉スタートが多く、集団で7区にタスキをつなぐことが多いですよね。
西田:そう。だから、一人で走るのが苦手な選手が配置することが多いかもしれないね。
■8区:暑さに強い選手
西田:時間的にちょうど暑くなる時間帯だし、暑さに強い選手を置いた方がいいね。
M:8区でフラフラになる選手も過去にいましたよね。
西田:あと、この時期は追い風になることが多いから、汗をかきやすい。それで気温が上がると、フラフラになる可能性が高いのかな。
M:後半に遊行寺の急な登り坂があって結構スタミナを奪われるので、8区も上りの強さというのは必要でしょうね。
■9区:前半から攻められて、スタミナがある選手
西田:前半の下りでリズムが作れれば、コースとしてはそんなに難しくない。スタミナに自信のある選手であれば安心していけると思う。
M:駅伝って最初は抑えて入るという傾向があるかもしれませんが、9区はある程度最初からリズムよくいった方がいいタイムで走れる傾向がありますね。
西田:たしかに。僕も最初の1kmを2分40秒ちょいで入ったと思う。(※当時の区間新記録樹立)
■10区:風に強く、最後まであきらめないメンタルの選手
西田:後半にビル風が強いから、風に負けずにグイグイ押せる選手であった方がいいかも。自分のリズムで走ってきて、疲れてきたところで風の影響でリズムが狂ってしまったら、ラスト4kmとかで後ろから追い付かれることもある。
M:アンカーですから、シード権争いをしている大学は、どうなるかハラハラしますよね。前を走るチームと1分差だったとしても58秒とか少しおまけして伝えて、モチベーションを切らさないようにしているとこもあるみたいです。
西田:最後まであきらめないメンタルの強さと、メンタルを切らせないチームワークも必要だね。
M:繰り上げで見た目の順位と、本当の順位が違うことが多いですよね。でも、最近は情報網が発達して、選手は自分が何位で前のチームと何秒差というのはしっかりと伝って分かっています。最終的な順位が決まる10区は気持ちの強さは必要だと思います。
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箱根駅伝まで、あとわずか。今年はどんなドラマが起こるのか目が離せない、今から楽しみです。
≪インタビュー≫
■西田隆維(にしだ たかゆき)
駒澤大学出身→S&B食品。箱根駅伝で駒澤大学の初優勝に貢献(当時9区区間新記録樹立)。2001年エドモントン世界陸上 マラソン日本代表。
現在は市民ランナー向けのランニングクラブNRC(NISHIDA RUNNING CLUB)の指導とマラソン大会などの企画・運営を中心に活動中。また、これまでの経験で学んだことを企業や学校で講演。
■M高史(えむ たかし)
ものまねアスリート芸人
駒澤大学陸上競技部OB(駅伝主務)。東京マラソン2017チャリティ・アンバサダー。自身考案の「ものまね体操」で保育園から高齢者施設まで訪問し続けるエンターテイナー。ものまね体操・英語版「ジャパササイズ」は8ヶ国後で翻訳され、スペインのテレビでも放送されるなど国内外から注目のエクササイズ。
オフィシャルブログ:M高史の日々精進!