指導法の改革が必要な時期なのかもしれない

西田:モチベーションって、指導者の影響も大きいと思う。箱根駅伝に限らず、選手のモチベーションの維持とか心のケアをできる指導者が減ったのかもしれない。

M:僕の頃、大八木監督は優勝した直後なのに叱られたことがありました。なぜ叱られたのか理由は忘れましたが、勝った瞬間に次の目標にチャレンジすることを意識づけるって意味があったのと思うのですが、燃え尽きさせないためにもそれは大切だなと感じています。

西田:子どもの教育も変わってきて、大学や実業団での指導法というのも変える必要があるのかもしれないね。個々の性格の違いや、どう育ってきた環境も違うから、昔よりも今の時代の方がチームの統制をとるのって難しいでしょうね。

M:さらに今は、インターネットやSNSも発達して、色々な情報も入ってきて、トレーニング方法に関しても、根性論より効率的に、科学的にという傾向が強くなってと思います。

西田:でも、先日の福岡国際マラソンで活躍した川内選手も50kmとか70kmとか走りこんでいたって話を聞くと、やはり、走り込むことでの脚作りってことは重要だと示したと思う。


効率性を求めることは悪いことじゃないけど、効率的にやろうとすると「逃げ」というものも入ってくる恐れがあると思う。「逃げ」というのは効率性を「楽に」ということとはき違えてしまうこと。

でも、そこで問われるのは自分自身で、本当に強くなるために、自分が何をすべきかということを、しっかり考えて行動に移せるかどうかが大事なんじゃないかな。

恵まれた環境が引き起こす弊害

M: 最近ではメンタルコーチを取り入れている大学もあって、専門のトレーナーや管理栄養士を入れて、指導の分業制というものが進んでいる流れがありますね。

それがいいかどうかは分からないけど、実業団に進んで、大学ほど恵まれていない感じることがあるという話を聞いたことがあります。

専用のグラウンドを持つ大学は多いけど、専用のグラウンドを持つ実業団はほとんどないですしね。大学では手を挙げればマネージャーが給水を走って持ってきてくれたけど、実業団ではそういうことはないという話も聞きました。

大学での競技環境が恵まれすぎているということが、実業団に進んだときの成長の妨げになっているのかもしれないですね。実際のレースでは給水が欲しいときに手を挙げても給水はないですからね(笑)

西田:たしかに、僕が大学の頃は、手を挙げても給水なんて持ってきてくれなかった。そんなに給水、給水っていう時代じゃなかったってのもあるけどね。

今の学生が置かれている環境がいいか悪いかって判断は難しいところなんだけど、これがなきゃダメ、あれがなきゃダメっていうようになってしまうのは、自分が何をどうやって目指しているのかっていう部分が見えなくなってきているということだと思う。

自分で必要だと思うものは、自分でその環境を手に入れるべきだし、当たり前のように環境が整えられているのは、競技に対して意識の低下を引き起こしている可能性はあるかなって思う。当たり前のことを当たり前じゃないって教えることってすごく難しいけどね。