音楽・芸能プロダクションのあり方にも変化はあるのか
ーーコロナ禍は今後の音楽・芸能プロダクションのあり方にも変化を及ぼす可能性はありますか。
もし変化がある場合、エンターテインメント業界にどのような影響があると考えますか。
堀:今までYouTuberがプロとアマの境界と言われていたけれど、プロが大量にYouTubeや配信を個人でやり始めて無料で配信していますよね。
自分でサービスを考えて無料で配信するということになった場合、芸能プロダクションは必要ないんですよ。そうなると、アーティストやタレント個人の責任は今より格段に増すということですね。
自己責任で全部やることになる。仮に炎上したらその瞬間からタレント生命が終わることもあるだろうけど、覚悟しているのなら個人でも今の時代だったらやってやれないことはないのかもしれません。
しかし、想像したくもないけれど、年単位で今の状況が続いたらアーティストや俳優が一人でやっていかなければならないということも最悪の場合は考えられます。
これまでのようにオーディションやスカウトから夢をつかむというシステムが崩れ、仮に海外のようにエージェント制が進むとなると、アーティストや役者は自分の資金でスキルを上達させた上で夢に向かって進むことになる。
自分でまわりのスタッフを集めて、彼らに対する責任や経済的負担を個人で負わなければならない。そもそも仕事が減っていく中、
本当に強いスキルを持っている人でないと生き残れないし、自分で自分を売り込んでいくということをやれる人が果たしてどれだけいるのか。
地上波のテレビがいつ正常に戻るのかというのもプロダクションにとっては大きな関わりのある問題です。ドラマやバラエティなど番組の中身だけではなく、
ACのCMが増えているということはCMを出していない企業が増えているということです。ハッピーなものは出さなくなったし、アパレルのCMはほとんどない。
企業の広告費もガクッと落ちているわけです。逆に缶詰や冷凍食品のように売れすぎて商品が足りないから広告を出せないというものもありますし。
広告の問題はYouTuberのようにYouTubeの広告で稼いでいた人たちにも影響しているはずです。スポンサーの経営が元に戻らないとネットも含めて芸能活動全体で厳しい状態は続いていくことになると思います。
ーー最後に、これからも音楽・芸能の文化を絶えず発展させていくために大切になることはどのようなことだとお考えですか。
堀:まず第一には経済的にも生命的にも生き残ることです。ただでさえ日本は人口が減っていて、みんなビジネスを海外に広げようとしていたわけで。
それすらできなくなっている状態であればとにかく生き残ることが第一。発展させていくために作る人も楽しむ人も生き残っていく。
もう一つは、せめてエンターテインメントくらいはいつも弱い立場の人の側に立っていたいということでしょうか。
アーティスト、タレント、クリエイターは上から目線だと言う人が世の中にはいて。一方で、芸能人ごときが政治のことに意見を言うなという風潮もある。
芸能の人たちは上に見られたり下に見られたり、真ん中がないので辛い思いをすることもたくさんあると思います。
そのときに、怒りで怒りに加わらないということが大事。一番弱い人は誰なんだということに目を向けることが重要なのではないかなと。
僕ら自身経済的にも大変だと言い続けることは大事だけれども、一方で他にも弱い立場の人がたくさんいることは忘れてはならない。
そして、その人たちも僕たちにとってはお客さんなんです。その人たちのことをずっと忘れなければ、あのときはエンターテインメントのおかげで助かったと言ってくれる日が来るかもしれない。
ーー社会に目を向けて弱いところに寄り添っていくことが大事であり生き延びることだと。
堀:そうですね。そして表現者は歌の題材になりそうなこと、芝居の題材になりそうなことが今このコロナ禍の世には溢れているので、創作期間だとわりきるしかない。
そしてこの病気が1日も早くおさまることを祈ることしかできないですよね。薬が早くできますように、医療従事者の人たちが少しでも大変にならないようにと。そう願うばかりです。
参照:リアルサウンド特集「コロナ以降のカルチャー」音楽の将来のためにできること CULTURE AFTER COVID-19