模倣するだけのコピーバンドとは違う、パンクバンドの高揚感

── そのバンドは、森さん、峯田さん以外にどんなメンバーの方がいたんですか?

峯田 森くんがギター、ベースが森くんの家の前に住んでたキヨタカっていう奴、それと藤木くんっていうロン毛のドラム。そこにボーカルとして僕が加わったんだけど、このバンド全員キャラ濃いなっていう(笑)。しかも、バンドの練習するのはキヨタカの家の車庫だからね。車庫の中にドラムセットとかアンプとかをどんどん持ち込んで、普通に昼間っから音を出しちゃう(笑)。あれは面白かったな。

藤木くんは最初、僕にさ「よう。本当に歌えんの、お前は」みたいに言ってきた。そこで僕は「歌えるよ!」っつって。やったことのないのに、そう言って(笑)。それでいきなりやったこともないハードコアをガチャガチャやったんだよ。忘れられないほど楽しかった、あのバンドは。

Photo:小境勝巳

── そのバンドでのライブのエピソードも度々語られていますね。

峯田 うん。ライブをやったのは山形のフルーツライン左沢線っていう電車の一番最後の駅の近くにある小さな町の、大江町ふれあい会館っていうところ。ちょうど高校を卒業するときの記念ライブみたいな感じで、誰かが会場を貸し切って、そこにいくつかのバンドと一緒に出たんだ。寒河江のパンクシーンのバンド、スケーターのバンドとかが集まってね。

ライブ当日になったら森くん、キヨタカ、藤木くんは革ジャンでさ、鋲とかがバンバン付いたのを着て来てる。チェーンを巻いてるキヨタカなんか「このチェーン重いわ!」みたいなことを言ってた(笑)。

── 峯田さんは?

峯田 僕は革ジャンとか持ってないからさ、おじいちゃんが着てたピタピタのスーツを「モッズスーツ」ってことにして着て。森くんは「いいと思う! かっちゃんはこのままのほうが良い気がする」って言ってくれたのを覚えてる。そのメチャクチャな4人で演奏したんだ。僕らはトリだったけど、結果的にこの日で一番盛り上がったよ。

実はさ、この森くんとのバンドの前にも、僕は一度だけ別の友達からBUCK-TICKのコピーバンドに誘われて歌ったことがあったの。ただ、そのときはカラオケをやっているみたいな感じであんまり面白さを感じられなかった。だってさ、「BUCK-TICKのように歌わなくちゃいけない」「音程を外さないでうまく歌わなくちゃいけない」っていうことが前提のバンドだったからね。だから、そのときはバンドっていうものをそんなに楽しく思えなかったんだよ。

でもさ、この森くんたちとのバンドは違ったの。僕がちょっとステージから声を発すれば、お客さんは「ウワーッ」と返してくれる。ラフィンノーズの『GET THE GLORY』をやればメチャクチャ暴れてくれる。「すげーな、これ」みたいな。とにかくすごく高揚したのを覚えてるし、忘れられないんだ、今でも。

あまりにも楽しくて高揚してさ。帰りに田んぼにみんなでダイブしたりしたから(笑)。本当に僕にとってすごい日だったんだ、あの日は。

※次回へつづく

●全11回インタビュー:各回更新!

峯田和伸が銀杏BOYZフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』全11曲を語る!【11週連続ロングインタビュー第1回】

銀杏BOYZ 峯田和伸が語る、アルバムを“サポートメンバー”と作ること【11週連続ロングインタビュー第2回】

リリース情報

銀杏BOYZ ニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』

【初回盤】
【通常盤】

10月21日(水)発売
品番:SKOOL-049 価格:3,300円+税

収録曲(全11曲)
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠 feat.YUKI
08.いちごの唄 long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・デコ有限会社を設立。 出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタテインメント、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある。