夫婦の間にも、ママ自身のためにも“翻訳者”が必要なワケ
泉:「育児を投げ出したい」という怖い意味に“翻訳”されてしまうような気がしました。
「朝から晩までゆっくり寝たい」と心から願いながら、「こんなことを思う私は“母親失格”なんじゃないか」と思ってしまうこともありました。
自分の気持ちがうまく言い表せないもどかしさから「アーッ全部やめたい!」なんて強い言葉を使って、周りにビックリされたり(笑)。
家族の皆が「変化」の渦中にあって、それぞれが混乱している時には、自分の気持ちの“翻訳”をして、本当はどうしたいのかを気付かせてくれる存在が大切だな、と感じました。
それには前回お話したような助産師さんや、ほかにも手助けをしてくださった方がたくさんいたように思えます。
例えば、病院に行った時に裏ワザを教えていただいたこともありました。
ママのつらさを伝えるにはこんな方法も?プロならではの驚きのアプローチ
泉:仕事に復帰した直後、疲れ切っているのに眠れなくなって、もっともっと疲れ切ってしまったことがありました。
それでクリニックに行ったのですが、対応してくださった女医の先生が問診の後、ホルモンバランスを整える漢方薬を勧めてくださったんです。
「これなら授乳中でも飲めますから」とおっしゃった後に、先生が付け加えたコメントが衝撃的で。
――何と言われたんですか?
泉:「コレは正直、気休めです。即効性があるワケではないから、当分は気休めにしかならないと思います。でも……」
――でも?
泉:「この薬を、家族の前で堂々と飲みなさい」と言われました(笑)。
夫から何の薬か聞かれたら「医者から『あなたは今とても疲れているから、この薬を飲みなさい』と言われた」と説明しなさい、と。「男の人にはそういうほうが伝わるから」って。
「まずはそれをやってみなさい。この薬はそういう風に使いなさい」と、先生が大真面目におっしゃるんですね。
そのアドバイスで私、結構、笑ってしまって(笑)。
かなり気持ちが楽になりました。
私が暗い顔で「疲れた」と口に出してしまえば、夫も「なんで手伝ってくれないの?」と責められているような気がして……という流れになってしまうと思います。
でも目の前で薬を飲んでいたら「あ、この人はいま、かなり大変なんだな」というのが伝わる。
家族中みんなが大混乱の時期だったので、この局面を平和に乗り越えるためには、そんなやり方でもいいのかな、と思いました。
――たしかに“翻訳”は、家族のためにも、ママ自身のためにも必要ですね!
翻訳が必要といえば“おっぱい”という言葉も、かなりキワドイ?
――そういえば産後の男女で捉え方が変わるモノに「おっぱい」もあると思うのですが。
『おっぱい先生』というタイトルも“翻訳”なしでお店に並ぶことを考えると……ある意味で賭けではありませんか。
泉:母乳外来の助産師さんのことを「おっぱい先生」と呼んでいるママは多いと思います。
ですがネットで「おっぱい」と検索すると、まずは大人向けのサイトがものすごくたくさん出てきます(笑)。
この題名にすることについては、編集さんともかなり話し合いました。
ですが「おっぱい」という言葉の意味は、その人の置かれている状況によってまったく違う、というのがすごく面白いなと感じたんです。
――ギャップが面白い、ということですか?