僕らが辿り着けなかった部分を『Beast』が補完してくれた
そんな綾野剛と[Alexandros]が、主演俳優とその主題歌を歌うバンドとして、この『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』で競演する。無類の音楽好きとして知られる綾野に聞く[Alexandros]の音楽的魅力とは。
「楽曲に“刹那”がありますよね。普通音楽を聴くときって、歌詞に魅了されたり、音のリフや雰囲気に気持ちが同化していくものだと思うんですけど、[Alexandros]の楽曲にはそれとはまったく違う驚きがある。
パソコン越しに聴いているのに、なぜかすぐそこでメンバーが演奏しているようなライブ感があって。
今回の『Beast』も、うまく呼吸ができない苦しさをなんとか振り払おうとしている勢いが生々しく伝わってくる。
ただ鳴らしているだけじゃない。ただ美しいだけじゃない。ドキッとする瞬間があるところが素敵です」(綾野)
良き友である綾野剛の主演映画で主題歌を歌うことは、[Alexandros]にとってもとても嬉しいことだった。 実はもともと想定していた主題歌は『Beast』のようなナンバーではなかった、と川上は明かす。
「プロデューサーさんからは、バラードがいいと言われていたんです。だけど、映画を観ていると、(綾野剛演じる)犬養の葛藤にどんどん自分ものめり込んでいって。
安楽死なんて決して簡単に解決できる題材じゃないし、正解か間違いかなんて誰にもわからない。
ドクター・デスのやっていることも、社会的に見れば批判されることかもしれないけど、そういうパブリックじゃないところ、もっと心の奥底ではこういう選択もあるかもしれないと思っている自分もいる。そんな葛藤が音となって溢れたとき、自然と激しめのリフになったんです。
そうして生まれたのが『Beast』でした」(川上)
『Beast』は、バラードという当初のオーダーとはまったく異なるタイプの楽曲だ。
そこで川上は当初想定していたバラードと『Beast』の2曲を用意して、プロデューサーに提案した。
「そしたら制作チームのみなさんも『どちらも良かったけど、こっちの激しめの曲がいいです』と言ってくれて、『Beast』に決まりました。
映画の中に出てくる役者のみなさんを追っていると、自然と鳴ってくるものがあるんだなって。それは、僕にとってもすごく面白い経験でしたね」(川上)
『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』綾野剛&[Alexandros]インタビュー 撮影:奥田耕平