何もないことを提示し、面白がってもらう

岡田将生×三浦大輔 撮影:源賀津己

――その共演者ですが、峯田和伸さん、寺島しのぶさんといった三浦さん作品経験者のほか、柄本時生さんや内田理央さんなど、バラエティに富んだ面々が集いました。

三浦 僕にとっては挑戦作になるので、まずは信頼出来る岡田くん、峯田くん、寺島さんというお三方をメインにしたいと考えました。あと思ったのは、統一感を持たせたくないなということ。

バラバラな、まとまりのない感じも、キャスティングの狙いではあります。それぞれ単体で面白い人というか、時生くんとか内田さんとか、なんか俗っぽいと思うんですよ。いや、言い方悪いか。存在がこう…俗っぽいっていうか。

岡田 また「俗っぽい」って言っちゃってますけど(笑)。

三浦 (笑)。つまりこの作品の匂いみたいなものに合っている方がいいなと思ったんです。

――新宿・歌舞伎町を舞台に、岡田さん演じる売れない俳優・菅原と、峯田さん演じる売れないミュージシャン・今井が出会うことから作品は動き出します。

岡田 ただ菅原と今井の間には、特に何もないんですよ。その何もない人間関係って、これまで作品にしてこなかっただけで、往々にしてそうあることが多いと思っていて。

で、今回はその何もなさに執着して描くことで、浮き彫りになるものがあるんじゃないかなと。つまり何もないことをお客さんに提示し、何もないことを面白がってもらおうと思っているんです。

岡田 まためちゃめちゃ難しいことをサラッと言いますね(笑)。

――演じる側にとっては、相当ハードルが高い作業ですよね?

岡田 しびれますね(笑)。

三浦 (笑)。だから演出に関しても、何もないことに突き進む感じになると思います。そこに何かが生まれてはダメだし、例えば菅原と今井の間に友情とかが芽生えてはダメなんです。

岡田 難しい!

三浦 でも結果的にそういうものの積み重ねが、ひとつの世界観になっていくのではないかと思っていて。

岡田 プロットを読んだ時点で、三浦さんの世界だなと思うのと同時に、また今までとは違う匂いも感じました。

三浦 結果、それがエンタメになり得るかが勝負ですし、僕にとっての挑戦だと思っています。

公演情報

COCOON PRODUCTION 2021『物語なき、この世界。』

作・演:三浦大輔
出演:岡田将生 / 峯田和伸 / 柄本時生 / 内田理央 / 宮崎吐夢 / 米村亮太朗 / 星田英利 / 寺島しのぶ / 増澤璃凜子 / 仁科咲姫 / 日高ボブ美 / 有希

【東京公演】

2021年7月11日(日)~2021年8月3日(火)
会場:Bunkamura シアターコクーン

【京都公演】

2021年8月7日(土)~2021年8月11日(水)
会場:京都劇場