コロナ禍の“今”を切り離さない役づくり

撮影:奥田耕平

斎藤さん演じる井手は、オリジナル版『CUBE』におけるレン(演:ウェイン・ロブソン)を彷彿とさせるキャラクターだ。

「人間の本質を擬人化したような、インサイドヘッドのような登場人物たちです。登場人物全員の個性を足して割るとちょうどいい人間の分布になると思うほど、台本にはそれぞれの役割がしっかり書かれていました。中でも井手は目的に直線的に向かっていくキャラクターで、冒頭から分かりやすい役割があると感じました」

撮影:奥田耕平

役づくりをする上でオリジナル版を研究したのかを問うと「役づくりのために過去のキャラクターを改めて見返すことはなかったです」と語る。

「オリジナルをどれだけなぞるべきかは考えましたが、結局なぞり過ぎないでいいかなと。おそらく主演の菅田(将暉)さんや岡田(将生)さんのファンなど、オリジナル版の『CUBE』を知らない世代の人たちも観にいらっしゃる作品だと思います。今リメイクされるからこそ、時代を経てつくられた良さはあるべきだと思ったので、“今”を体感できるような役づくりを優先しました。

撮影がコロナ禍真っ只中でしたから、その状況下で味わった自分の実体験を役柄にも味わわせたかった。役とプライベートを切り離さない精神状態で撮影に挑みました」

「また、持ち込んだものを発表する場ではなく、その場で起こる心の中の現象が素直に見えたら一番いいとも思っていました。人とお芝居をするとそこでしか起きない化学反応、アンサンブルが起こる。『CUBE』の撮影現場でもそれぞれのキャラクターがどんどん立っていくんですよ。

いい意味でお互いに影響を受けて、役柄が生き生きとしてくる実感があって。直前までリモートでの撮影ばかりだったので、近くに人がいる状況でお芝居ができるありがたさを改めて感じました」