極限状態に陥った驚愕エピソード「一度死を受け入れました」

撮影:奥田耕平

『CUBE 一度入ったら、最後』は年齢も性別もバラバラの男女6人が、死のトラップが仕掛けられた謎の立方体の部屋“CUBE”に閉じ込められ、極限状態になりながら脱出を試みるさまが描かれている。

本作のテーマにちなみ、斎藤さんが人生で一番極限状態に陥ったエピソードを聞くと、「いろいろありますけど……」と逡巡した上で、想像以上に濃ゆい話しを語ってくれた。

「18歳くらいの時ですね。当時バックパッカーをしていて、フランスの治安の悪い場所にある宿に泊まったんです。隣の部屋に泊まっていたカップルと仲良くなって、情報交換や物々交換をしていたのですが、ある日そのカップルのもとにフランスの裏稼業の人たちが取り立てに来て。

ドアを蹴破った音、女性の悲鳴、殴打する音があり、カップルの男性は血だらけで意識が朦朧としている。とんでもない現場に唖然として僕は棒立ちになっている中、宿の人たちはそういう状況に慣れているのか、『警察を呼ぶぞ!』と言って裏稼業の人たちを追い返していました。

その後、僕は用事があり外に出たのですが、メトロ(駅)に向かう道中、なんと裏稼業の人たちと再遭遇してしまい……『さっきの宿にいたやつだろ? 警察に行く気か!』と言われ、何度違うと説明しても通用せず、おそらく組織のボスのような老人が乗っている車に連れ込まれたんです。そして、パスポートを含めた荷物を全部取られ、拉致されてしまいました。

郊外の農家のブドウ畑のような場所で車から降ろされ、木のふもとでスコップを渡されて。僕はそれまで色んな映画を見てきたから、スコップを渡された意味が分かってしまい、これはもうダメだなと思いましたね。親や祖母より先に死ぬ……ごめんね……と走馬灯を見ながらゆっくりと穴を掘り進めました。

幸いなことに、まだ埋まらない半分くらい掘ったところで取られた荷物を投げられ、シャベルを取り上げられ、『Take care(気を付けろ)』と言って彼らは去っていったのですが……」

撮影:奥田耕平

この経験から斎藤さんは人生を“余生”として考え、「今はボーナスタイムなんです」と話すのだ。

「僕は一度体や脳が死を受け入れてしまった。抵抗するのではなく、死へ誘われていました。当時はそれがすごく怖くて帰ってすぐは誰にも話せませんでしたけど、バラエティ番組でその話ができるようになった時、自分の中で浄化されたなと感じました」

斎藤さんが自身の死を受け入れた心情と『CUBE 一度入ったら、最後』で描かれる登場人物たちの心情はどこか近しい位置にあるのかもしれない。

「精神的に極限状態に陥った時、自分でも想像していなかった自分が見えることがあります。本作の登場人物たちも遠からず、当時の僕と同じ精神状態になっているのではないでしょうか。僕はかなり早いうちに体感として理解できていたので、今考えると貴重な体験でした」

映画『CUBE 一度入ったら、最後』は10月22日より全国ロードショー。

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