森田さんが相手だからこその相乗効果が生まれた

撮影/川野結李歌

──工藤役の森田さんとの共演はいかがでしたか?

いい意味でオーラがなく、背中が丸い感じの佇まいを撮影現場では保っていらっしゃいました。あまり目を合わせて芝居をすることもなくて。撮影が残り2日ほどのときに初めて目を見て話すシーンがあったんですが、目がすっごく美しかったです。

森田さん自身のお人柄が目に映っているようにも思えましたし、工藤誠という人物の切なさや繊細さを感じられました。それにより、佳代の母性が働いて。森田さんが相手だからこその相乗効果がお芝居に生まれていた気がします。

©2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

──そんな工藤を追う刑事・滝本真司を、磯村勇斗さんが演じています。『ひよっこ』以来の共演ですね。

『ひよっこ』はほっこりした作品で、平和な空間でお芝居をしていました。今回はシリアスで緊迫したシーンばかりだったので、妙な照れ臭さがありましたね。真剣な顔ができるかなあっていう不安もありましたが、現場に行ってみると全然大丈夫でした。

すごいですね、ガラッと雰囲気が違っていて、全くヒデさんじゃなかったです。真司と佳代にスッとさせてくださいましたし、すでに信頼関係があった分、あとはぶつかるのみでした。

──斉藤みどり(石橋静河)は阿川が初めて担当した保護観察対象者ですが、ふたりの絆が描かれるドラマ版は映画の後に撮影されたそうですね。

そうなんです。映画の中では佳代とみどりさんの関係性がすでに成立しているのに、ふたりが関係を築いていくドラマの撮影の方が後で。「大丈夫かな?」と思いましたが、何も心配はいりませんでした。すべて石橋さんのおかげです。

工藤さんとはまた別の意味で、最初に担当したみどりさんは佳代にとって特別な存在。佳代がみどりさんに助けられるように、私も石橋さんの存在にずっと助けられていました。

©2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

──過去を乗り越え、人は変われるか。そんな物語のテーマを、有村さん自身はどう受け止めていますか?

私にも、過去の後悔はいっぱいあります。このお仕事を始めてからは叱ってくれる大人にたくさん出会えましたが、学生時代は自分の意思すらあまりなかったですし。お仕事をしていく中で初めて、「こうでなきゃいけないんだ」といろいろ気づかされました。そのおかげで変わっていくことができたんだと思います。

デビューしてからもひと筋縄ではいかないことばかりでしたし、監督にもたくさん怒られました。でも、怒られてどうするかは自分次第。向き合うことさえ諦めなければ、人は変われるのかなと信じています。

映画『前科者』は1月28日(金)より公開。

ヘアメイク/尾曲いずみ スタイリング/瀬川結美子
衣装協力/エボニー、ルーム エイト / オットデザイン、リューク、マナ