さて、集大成的な舞台ということで、本公演の登場キャラクターは非常に多い。
シリーズ通しての主役となる伊達政宗（久保田悠来）、真田幸村（細貝圭）、彼らの腹心である片倉小十郎（吉田友一）や猿飛佐助（村田洋二郎）といったおなじみの顔ぶれはもちろん、徳川家康（広瀬友祐）、石田三成（中村誠治郎）、武田信玄（中村憲刀）、上杉謙信（AKIRA）、雑賀孫市（八代みなせ）、鶴姫（川村ゆきえ）、天海（谷口賢志）、風魔小太郎（高橋光）、最上義光（今井靖彦）、今川義元（塚本拓弥）、浅井長政（桜田航成）、お市（玉置成実）などバラエティーに富んだメンバーが総登場する。
注目は、原作で悪役として描かれている織田信長（窪寺昭）が久しぶりに再登場すること。もちろん歴史的観点からいえば舞台設定は本能寺の変の後なので織田信長が生きているわけはないのだが、そこは自由な発想で常に歴史ファンの予想の斜め上をいく戦国BASARA。そっちの方が話として面白いのであれば、少々のことには目をつぶるのだ。そもそもそんなことを言い出したら他にも本来いてはいけないキャラクターが大勢いるし。
そんな信長以上に今回の物語のカギを握るのが、初登場となる松永久秀（松田賢二）だ。戦国BASARAにおいては、己の欲望に忠実で目的のためなら手段を選ばない狡猾な男として描かれており、その悪役っぷりは織田信長や石田三成、明智光秀といったこれまでのヒールと比べても群を抜いている。織田信長と松永久秀という2大悪役がそろったことで、本作はこれまでの舞台と比べてもかなりストーリーが濃い作品に仕上がっているのだ。
いつもよりもストーリー重視の舞台「戦国BASARA3 宴」だが、もちろん今までの作品同様、殺陣でも魅せてくれる。というよりも、殺陣と殺陣の合間にストーリーが進むといった具合で、公演時間の半分くらいは斬り合っているのではないかと思うほどのボリュームだ。本来の歴史では刃を交えることなど絶対になかっただろう武将同士の戦いや共闘が楽しめるのも戦国BASARAならではといえる。
アクション面では、すでに演じ慣れているメンバーはもちろん、今回が初登場の武将役の俳優陣もきっちりとゲームの動きをトレースできているのはさすがの一言。浅井長政の決めポーズや今川義元のステップ、最上義光のちょっとした仕草など、原作を遊んでいたプレーヤーなら思わずニヤリとしてしまうだろう。個人的にはお市のおどろおどろしい技をしっかり再現していたことに感心させられた。まさか「死者を呼び出して操る」技をああいった形で表現するとは……玉置成実の迫真の演技と合わせて一見の価値がある。
