対象に極度な丸みを帯びさせて描くことで知られるコロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロ。今年90歳になる彼が監修した展覧会『ボテロ展 ふくよかな魔法』が、Bunkamura ザ・ミュージアムで7月3日(日)まで開催されている。
初期から近年まで、70点の作品の多くが日本初公開となる大規模展だ。
あらゆるかたちをぷくぷくと膨らませ描く
画家、フェルナンド・ボテロ(1932~)は南米コロンビア出身の美術家。あらゆるかたちをぷくぷくと膨らませ描く彼の画風は、とてもユーモラスで、見る人によっては皮肉めいても見える不思議なものだ。
同展は、日本では26年ぶりとなる彼の大規模展覧会。ボテロの作品をさまざまな角度から捉え、その魅力に迫っていく。
展覧会は6章構成。第1章「初期作品」では、独自のふくよかな作風となる前の作品を紹介する。《泣く女》はボテロが17歳のときの作品。まだ彼の特徴となる強烈なデフォルメはないものの、巨大な手や肉付きのよい足などにこれからの片鱗を伺える。
第2章「静物」では、ボテロのみっちりとした静物画を紹介する。ボテロが現在の画風を「発見」したのは、実は静物画がきっかけだ。
1956年のある夜、マンドリンを描いていたボテロは、マンドリンの穴をとても小さく描いたとき、その輪郭と細部に大きなコントラストが生じ、楽器が膨らんで見えることに気づいた。
この気づきから彼はボリューム感あふれる作風を進んでいく。展示作品も、静物でありながらむちむちとしており生命感をも感じさせるものが多い。
《楽器》は1998年の作品。極度に小さく描かれているギターの穴を見ていると、ボテロの「発見」が追体験できそうだ。