「僕、自分に興味がないんです」ーー真っ直ぐな目でそう語る彼に、繕う様子は感じられない。ああ、この人は本気でそう言っている。五大ドームツアーを満員にするアイドルグループ・嵐の一員であり、人の心に強い印象を残す役者の一人でありながら。
映画『TANG タング』で二宮和也が演じたのは、ロボットと心を通わせる主人公・春日井健。とある理由で医者の夢を諦めた彼は、自宅でゲーム三昧の日々に。いわゆる“ダメ人間”となってしまった健が、ポンコツロボット・タングとの出会いで前向きさを取り戻していく様が描かれる。
健のように、ダメな自分と向き合い、挫折を乗り越えた経験が、役者・二宮和也にはあるのだろうか。
2〜3個の言葉だけじゃ表せないのが、人
「13歳で芸能界に飛び込んでから、この仕事が僕にとってのすべて。なんでも器用にこなすように見えているかもしれないけど、本来は、人とコミュニケーションを取ったり集団行動をしたりするのは苦手なんです。
小さい頃からゲームのコントローラーを握って、右ボタンを押したら画面内のキャラも右に進んでくれるような人生でした。そんな僕がいまでもこの仕事に興味を持ち続けられているのは、“苦手だからこそ”なのかも」
誰もが知る人気アイドルであり、役者でもある二宮から出た言葉とは、とても思えない。苦手だからこそ、この仕事を続けてこられた真意について「目の前にいる人たちの思いがわかってきたのかな」と続ける。
「ゲームのように操作性が効かないのが現実で、その中で仕事をしてきて、少しずつだけど、人の考えが想像できるようになってきたんです。苦手だからこそ、仕事や人に向き合ってきた。その結果、人の求めるものがわかるようになってきたのかもしれません」
役を生きる。そんな表現を目にするたびに、二宮こそがそれを体現する役者だと感じる方も多いはず。その表現力は、類まれなる観察力に比例しているのだろうか。
「僕は自分自身に興味もないし、周りにどう思われようが関係ないと思っていて。だから、自分が演じる役に共感したことも少ないです。30年以上も生きている健の性格を、たった2〜3個の言葉で表現するのはウソくさい。それは自分に対しても同じこと。誰しも、調子が良いときもあれば悪いときもある。その瞬間の感情だけで十分だと思ってるんです」