監督の要求に、早さと質で応える
作中の健は、医者になる夢を挫折してからというもの、ダラダラとゲーム三昧。妻・絵美(満島ひかり)とはケンカばかりだ。主人公・健と二宮の間に、共通点は見えない。
「僕自身、思ったことはハッキリ言うし、やりたくないことはやらないタイプなんです。だから、健とは真逆かもしれません。ああ、こういう人っているよなあ〜って俯瞰的に見てたというか。だから、自分とは逆のことをやり続ければ、自然と健のキャラクターに近づいていくんじゃないか。そう思いながら演じてましたね」
三木孝浩監督の要求に、どれだけ早くレスポンスできるか。現場を止めないように、出せる表現を全力で返す。それが、本作における二宮のテーマでもあった。
「実際には動かないタングとの芝居も、リアリティが出るように細かなところまで気を遣いました。たとえば、AからB地点まで健とタングが一緒に歩くシーンで、“僕はこれくらいのスピードのつもりで歩いてます”と共有するのを忘れない。こうしたい、ああしたいといった要望は、タングを動かしてくれるスタッフに細かく伝えましたね」
細部までこだわったリアリティは、余すところなくスクリーンに映し出されている。まるでタングが本当にその場にいて、歩いて喋っている感覚を、鑑賞者全員が味わえるのではないだろうか。
劇中で描かれている舞台は、ロボットとの暮らしが当たり前になった世界。近い未来に似たような環境が実現するのでは? と思わせられる。しかし二宮本人は「いまでも十分ロボットと共存してる感覚です。お風呂を沸かすのも洗濯もボタンひとつでやってくれるし。僕、もう満足しちゃってるかもしれない」と笑顔を見せた。