0→1に進む物語じゃなく、0に戻る物語
すでに二宮の演技力は周知されている。しかし、今作では特筆したいシーンが目白押しだ。あらためて一番の思い入れがあるシーンについて聞くと「今回の撮影って、実は……」と秘密の話を打ち明けるように語ってくれた。
「現場がね、ずっと圏外だったんですよ。僕、タングの撮影の裏ではずっとYouTube動画の編集をしてたんです。合間にちょっとずつデータを落とし込んで……それがもう、大変だったんですよね」
タングとともに旅をするシーン、妻の絵美に愛想を尽かされてしまうシーン。体力的にも精神的にもつらい撮影が続く裏側で、個人の活動にも時間を割くのは簡単なことではない。
いつもの笑顔で「ほんとにね、大変だったんですよ! とあるシーンで“疲れちゃったよね”ってセリフがあるんですけど、本当に疲れてたので会心の“疲れちゃったよね”が出せました」とユーモアたっぷりに教えてくれ、取材の場が笑いに包まれた。
「最近、とくにいろいろなことが起こってますよね。生きづらく感じる面もあるけど、頑張って前を向いて歩いていこうね!って自分も周りも励ますのは、そろそろしんどいな……って思う自分もいるんです」
目を背けたい出来事はたくさんある。それでも二宮は、なかったことにもしないし、向き合うことを強制もしない。
「映画『TANG タング』は、0→1に進む物語じゃなく、0に戻る物語。大人が、迷ったり立ち止まったりしながらも、最後にはちゃんとスタート位置に戻ってくる物語です。失敗したって、0に戻ることはできるじゃないですか。
ゆっくり時間をかけて0に戻ったあとは、また自分が行きたい道を探す時間を過ごしてもいいんじゃないかなって思う。眩しすぎず、熱すぎず、ちょうどいい“あったかさ”の映画になりました。ぜひ、劇場で確かめてもらいたいです」
©2015 DI ©2022 映画「TANG」製作委員会
作品情報
映画『TANG タング』
上映中
配給:ワーナー・ブラザース映画