朝ドラを経て、アクがとれた感覚がある

朝ドラは、前田公輝の大きな夢だった。出演が決まったときからクランクインの日を心待ちにし、今まで培ってきたすべてをぶつけるつもりで撮影に臨んだ。
「よく喉に心臓があるとか言うじゃないですか。僕、撮影初日の日は、唇に心臓がありました(笑)。台詞がちゃんと言えるか心配になるぐらい頭が真っ白。何でこんなに自分の中で憧れを強くしたんだろうって。逆に自分の首を絞めてるだけじゃないかなって思いました」
「ゆし豆腐とかこんなでしたよ」と言って、ゆし豆腐の入った木箱を持つ手をブルブル震わせるようなジェスチャーをしておどけた。プレッシャーを乗り越え、やり遂げられた実感があるからこそ、テンパっていた頃の自分も笑い話に変えられる。
「それだけ憧れた場所だからこそ、乗り越えたあとにもらえる贈り物もすごくある。1年間、本当にいい時間を過ごさせてもらったなって。その人の生涯を若い頃から年をとったところまで描けるのは朝ドラならでは。他の作品ではなかなかできない経験をさせてもらいました」
そうしみじみと噛みしめる顔は、なんだかとてもすっきりしていた。沖縄の海を見て自然体でいいんだと思ったときも、きっとこんな顔をしていたんだろう。

「なんだろう。今はアクがとれたっていう感覚があるんですよね。自分に必要なものが見えてきたというか。もちろんもっとやれることを増やしたいという気持ちはあるんですけど。20代の頃、あれもこれもといろんなことに手を出して。それが今は自分のやるべきことに集中できているというか。整っているっていうのが近いかな。
仕事に対してもプレッシャーを感じづらくなったし、全部に全力投球するんじゃなくて、ちゃんと力の配分ができるようになった。今、とっても心地いいんです」
俳優は、いろんな作品との出会いで変化していく。きっと前田公輝は大きな転換点を曲がり終えた後なのだろう。視界が変わり、進むべき道もクリアに見えている。だから、焦ったり迷ったりしない。
朝ドラという夢を現実にした前田公輝は、今、次なるチャプターへ進もうとしている。
ヘアメイク/松田蓉子 スタイリング/千葉良(AVGVST)
書籍情報

撮影:本多晃子
発行:ワニブックス
価格:3,080円(税込)
※「ぴあ」アプリでは前田公輝さんのサイン入りポラを2名様にプレゼント!

ぴあアプリでは前田公輝さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。