1年もの間携わり続けた『ちむどんどん』
そんなふうに肩の力を抜くことができるようになったのは、彼がひとつ大きな山を乗り越えたからかもしれない。準備期間を含めれば1年もの間携わり続けた『ちむどんどん』。すっかり沖縄弁も体に染みついている。
「(沖縄のイントネーションで)でーじ身につきましたね。ずっとこのまま喋っていられるくらい本当喋れるんですけど、沖縄弁を喋れるようになったら、関西弁ができないことになって、それがちょっとネックというか。沖縄弁も関西弁も習得できたって思っていたのに、どっちかしか使えないってなると、なんかちょっともったいない気がするなとか思ったり(笑)」
「まさかやー」「あきさみよー」といったフレーズもすっかりおなじみに。「リハーサルのときに、まさかそんな演出だったんですかっていうときに、キャストのみんなで『まさかや~』ってギャグで言ったりしてます」と笑う。前田公輝は、よく笑う人だ。
そしてその笑顔が、演じた砂川智と重なる。智もよく笑う人だった。
「智は、苦しいことはあんまり人に見せない男。それこそ恋愛編でもだいぶ苦しかったと思うんですけど、それ以上に自分自身を信じていて。自分を信じて、有言実行できる力があるから、独立してもうまくいった。『ちむどんどん』の中でいちばん成長が見えるのが智なんじゃないかと思っています。ただし、恋愛以外は(笑)」
そう付け加えて、ちょっと気恥ずかしそうに、暴走気味だった智の片想いを振り返る。
「暴走でしたよ、本当に(笑)。周りが見えなくて、暢子は自分のことを好きだと過信して突っ走って。でも、暢子は何にも意識していない。和彦と愛ちゃんは付き合ってるから、まだ成立してるんですよ。僕だけステージが違う(笑)。4人でいるときも、僕1人だけ浮いてる芝居をしないといけなかったのは辛かったですね」
もしも智が友人だったとしたら、何とアドバイスをしましたか。そう尋ねると、「アイツ、言っても聞かないと思いますよ」とまるで無二の親友について語るように手を横に振る。
「言って聞くようなやつだったら、まず付き合ってもないのにプロポーズしない(笑)。僕だったらまず『付き合ってるのか?』『手はつないだのか?』って確認します。手もつないでないのにプロポーズするとか、どういう神経してるんだよってツッコみたいですけど。
たぶん仕事がうまくいっていたのもちょっとあるかもしれないですね。これで仕事が停滞してたら、もうちょっと恋愛にも慎重になったかもしれないけど、順風満帆すぎたのがプロポーズするきっかけのひとつになった気がします」