キスシーンは役の気持ちとして感じたものを大切に

撮影/小嶋文子

――鈴木さんは「ドラマシャワー枠」の『高良くんと天城くん』にも出演していましたが、当時の共演者の方に相談をするとか、あの現場での経験が役立ったことはありましたか。

鈴木:それこそ、今、放送している『アカイリンゴ』というドラマで、(『高良くんと天城くん』での共演後に)『永遠の昨日』にも出ていた小宮璃央くんと一緒で。

僕は『永遠の昨日』を全話観ていたので、「あのときはどうだったの?」とかって聞いたり、それこそ「キスシーンはこうするといいよ」とかって教えてもらったり、このシリーズの先輩としてアドバイスをたくさんしてもらいました。

――今、お話にも出ましたが、キスシーンはやはりこのシリーズの見どころだと思うのですが、演じる上で気を付けたことなどはありましたか。

本田:キスシーンも撮影する前に「ここでこういうふうにキスをして」みたいな段取りはしましたが、そのあとは細かく決めずに、本番の中で役の気持ちとして感じたものを大切にして演じました。

撮影/小嶋文子

――他のシーンと変わらないやり方だったのですね。

鈴木:あとは二人で腕立て伏せをしてパンプアップしてから撮ったシーンもありました。そういうのはすごく楽しかったです(笑)。

――撮影した映像はその場でチェックはしているんですか。

本田:ほとんどしてないです。

鈴木:なのでどんなふうになっているのか、僕らも楽しみでもあります。

――物語上、記憶を失ったあとの律と郁哉のシーンと、郁哉が律の記憶が失われる前を回想するシーンとがあって、ある意味、2つのストーリーが同時進行しているような感覚もあります。その辺りの気持ちの切り替えはどうでしたか。

本田:そこは本当に難しかったです。記憶の有り無しもそうですし、記憶を失ってから郁哉を好きと思う瞬間と、記憶を失う前に好きと思っていた瞬間の違いもあるし。

そもそも事故に遭ったばかりのときって、郁哉の記憶だけがないのか、郁哉以外の記憶もないのか、律もはっきりわかっているわけじゃないし。郁哉以外の記憶も曖昧みたいなところがあって、日が経つに連れて徐々にはっきりと、目が覚めていくような感覚とかも見せていかないといけなくて。

シーンごとにちょっとでもわからないと思ったり、違うなって思うところがあったら監督さんに相談していましたし、逆に違うと感じるところがあれば言ってほしいですとお願いもしていました。そこは監督さんと信頼し合いながらできたかなと思います。

撮影/小嶋文子

――視聴者の目線だと、すべてを地続きに観てしまっているけど、演じる側としては、その都度、気持ちを確認しないといけないですものね。

本田:記憶を失う前には、何年かに渡っての二人の関係があるから、その中での思い出とかもあって好きっていう気持ちがあるんですけど、記憶を失ったあとは、律としては郁哉とは初めましてのようなものなので、その中で段々好きになっていくっていう初々しさがあるんです。同じ郁哉を好きという気持ちでも違うものなので、そこはすごく難しかったです。

――一方で、郁哉の方は律の思い出はありますけど、関係性は変わってしまいますよね。

鈴木:ただ関係性は変わっても、演じる僕としては郁哉を変えるってことはしていなくて。けど、響矢くんと一緒にお芝居をしていて、律が別人という感覚はありました。

記憶を失った律は、まだ何もしらないから初心な感じがするんですけど、失う前の律は、なんと言うか“ザ・律”みたいな(笑)、少し強い一面があったり、ワンチャン、郁哉よりもしっかりとしていたりもして。

本田:ワンチャンどころか、だいぶ律の方がしっかりしてるよ(笑)。

鈴木:そうだね(笑)。だから(本田を)見ていて、一人二役演じているような感覚だろうなって。他人事みたいな言い方ですけど「大変そうだな~」って思いながら、(本田に向かって)ごめんね。

本田:全然(笑)。