一挙手一投足、見逃さないようにしていただきたい
――6人での会議室のシーンは、舞台作品の会話劇のような感じもありますね。
普段の映像作品とは違っていて、芝居の作り方もかなり細かかったです。例えば、場面ごとにそれぞれの立ち位置を決めたり。実際のセットを使ってのリハーサルの時は、まさに舞台をやっているような感じでした。
――会議室での撮影は「楽しさもあり、大変さもあり」とコメントされていましたが、どんなところに「楽しさ」を感じましたか。
6人で集まって世間話をしているときはすごく楽しかったです(笑)。お芝居では、普段のドラマや映画の撮影だと、段取りをやって少し修正をして、もう本番、みたいな感じで、1、2回しかできないんですけど、今回はそれが何回もできたのは楽しかったです。
新鮮さよりも、詰めていく先に、嚙めば嚙むほど、やればやるほどコツが掴めるというか、気持ちが高まっていく楽しさがありました。
――そのように演じたものを、完成した映像で観たときはどう感じましたか。
現場では悩みながら演じていたところもあって。やっぱり原作の小説から脚本という形に変わると、描き切れない部分も出てくるんです。そこをどう色付けしていけばいいのかは考えました。
物語の中では細かく描かれてはいないけど、九賀の中にはいろいろな感情があって、その結果として行動しているので。そこは監督とも話して、「自分の中で作るしかないよね」と。
九賀が取る行動には、ある大きな理由が存在することがのちに明かされるんですけど、正直、僕はその理由だけでなく描かれていない部分も出していきたいなと思ったんです。そこは監督と相談をしながら、自分で作り上げていきました。
そういう意味で、違和感がないか不安もあったので、完成作を観たときは安心したという気持ちが強かったです。
――こういうミステリー要素のある作品では、「佐野勇斗」としては誰がどんな嘘をついているのか、結末がどうなるかも知りながら演じるわけですが、そのあたりはいかがでしたか。
常に九賀のそのときの気持ちと、観客の皆さんから九賀がどう見えているかと、その両方を意識していました。
普段は自分の感じたままに、ストレートに感情を出せばいいんですけど、この作品の場合は、いろんな嘘が暴かれていくと、「あのとき九賀ってこういう気持ちだったのかな?」って、考えるところが出てくると思うんです。
それこそ2回目を観る方は、結末がわかった上で、僕らの表情や行動を観るので、そこでも違和感のないようなものにできるよう考えていました。
僕ら6人はお互いに、お互いの役柄の状況がわかって演じているわけじゃないですか。だから、「感情が出過ぎじゃない?」ってツッコまれることもありました。「ここでこんな顔はしないだろう」とか。
――観る人によって見え方が変わってくるような表情にしないといけないってことですものね。例えば、怒っているようにも、悲しんでいるようも見えるというか。
あとから振り返ってみると、「あの表情ってこういう意味だったのか」って思うようなところもあるので、そういう意味では、一挙手一投足、見逃さないようにしていただきたいです。