自分が思う佐倉くんと、客観的に見た佐倉くんを融合させながら作っていきたい

©2026 藤まる/双葉社・「時給三〇〇円の死神」製作委員会

――酒井麻衣監督はなにわ男子のMVの演出などもされていて、以前から面識はあったと思うのですが、今回、映画の監督として接してみてどうでしたか。

全然違いました。以前から、作品に対して愛とこだわりを持っていて、すごく美しい映像を撮るという印象はあったんですけど、今回は、お芝居ということで、より親身になって考えてくださる方なんだ、という印象がつきました。

監督もおっしゃっていたんですけど、MVとかコンサートの幕間の映像は、役ではなく、その人本人として出るものだから、自由だし、その人のいいところが出るように演出や、編集をするけど、お芝居は役があって、それは西畑大吾でも、なにわ男子でもないので、そうなった時に、より撮りたいものを明確に指摘してくださって、すごく心強かったです。

基本的には自由に演じさせてもらいましたけど、違うときは「違う」と言ってくださるし、違うアプローチの仕方を提案してくださることもありました。

僕自身、お芝居の作り方として、自分が思う佐倉くんと、客観的に見た佐倉くんを融合させながら作っていきたいという想いがあったので、親身になって演出してくださって、アドバイスをいただけたことはすごく心強かったです。

©2026 藤まる/双葉社・「時給三〇〇円の死神」製作委員会

――例えば、どんな場面で違うと言われたのでしょうか。

撮影期間の最初のほうだったんですよね。例えば、久しぶりに朝月さん(渋谷凪咲)に会うシーンとか、大学でのシーンは結構、言われた記憶があります。あるシーンで、感情をむき出しにする場面があって、僕は、怒りの表現をしたんですけど、監督的には怒りではなく、悲しみや、諦めだったので、すり合わせをするとかもありました。

――演じながら、監督との佐倉像をすり合わせていったと。

そうですね。だから、撮影期間の終盤は褒めてくださることもありましたし、試写を観させていただいたときに、「西畑さんが、撮影中、佐倉くんと重なり合っていくのが見れてうれしかった」という言葉をかけてくださって、すごく嬉しかったです。

©2026 藤まる/双葉社・「時給三〇〇円の死神」製作委員会

――酒井監督が西畑さんに対して「ご自身の限界を突破していく瞬間を何度も目の当たりにしました」とコメントされていました。その点についてはどんな印象がありましたか。

限界突破に関しては、自分で「いま突破してるな」とかは、わからなかったので、それを感じ取ってくださっていたのはうれしいです。監督は優しかったですけど、スパルタでもありました(笑)。それは、やっぱり作品に対する愛が強いからで、だからこそ、そのリーダシップについて行こうと思えたし、魅力的な監督だと思いました。

――些細な表情や、態度の変化で感情を見せるシーンも多かったと思うのですが、心がけていたことはありますか。

感情については、監督から「抑えて」って言われることのほうが多かったんです。溢れだすものを、止められなかった。後半のシーンは特に言われることが多かった気がします。

完成した作品を観ると、あそこは抑えるのが正解だったと感じたので、さすが監督だなと思いました。佐倉くんは死神のアルバイトを始めてから、いろんなことがあり過ぎて、感覚が麻痺していたところもあったと思うんですよね。

――監督に「抑えて」と言われるほど、気持ちが入り込んだ理由は何だったのでしょうか。

花森さんとのシーンが多かったんですけど、花森さんのことを考えると、勝手にというか。このアルバイトはやっぱり残酷なんですよね。でも、その中で見出した希望みたいなものが、すっごく明るい光を放っていて、それに向かって突っ走っていたという感じではあります。