ベビー休憩室は、ママと赤ちゃんの“隠れ家”ではない?

仲:私の理想は、少数意見になってしまうかもしれないのですが(笑)

私自身、「授乳」は本来、隠れてやらなきゃいけないことではないと考えています。

――でも先生は、隠れて授乳するためのスペースを作っていらっしゃるのですよね?矛盾していませんか?

仲:私はベビー休憩室が、ママたちを“隔離”する場所ではなく、もっと開けた、ちょっとホッとできる場所になるといいなと思っています。

至れり尽くせりで体重計からおもちゃまで備えられているものよりも、少し景色がよかったり、ゆったり座れたり。

極論をいえば、まるで気持ちの良いカフェのような感じで、ママやパパがくつろぎながら授乳できるところが、ママと赤ちゃんにとって最もいい環境なのではないかなぁ、なんて。

そしてそこで、ほかの赤ちゃんの様子を見たり、時におしゃべりをしてみたりというのも、リラックスのひとつになるかもしれません。

ですので、個室ブースになっているベビー休憩室は、実はあまり好きじゃなかったりします。畳敷きのような大部屋で授乳やオムツ替えをするのも、悪くないアイデアじゃないかとすら思っているほどで。

あと、授乳室にはたいてい窓がないのですが、私はこれには疑問を持っていて、景色を楽しみながら授乳したいママもいるんじゃないかな。

とはいっても、自身の設計経験からの実感ですが、施設側から「個室化」や「閉鎖性」を求められることも多く、それゆえに席数が増やせないというケースもあります。

廊下などパブリックのエリアから少しでも見えるような配置になっていると、図面にピーッと視線を指す斜めの線を引かれて「ダメです!」とチェックを受けることも……なかなか、厳しいんですよ(笑)

共用のスペースを効果的に設けることで席数を増やし、より多くのママが利用できるようにするのも、ママたちの“不足感”を解消する方法のひとつです。お友だち同士での利用もできるでしょうし、そこでの交流がママの心を和らげることもあるでしょう。

こういったメリットと「個室化」とのバランスも、今後の課題といえるかもしれません。

――授乳室の個室化傾向は「公共の場での授乳」が問題になる、いまの日本社会の縮図ともいえるかもしれませんね。

仲:では海外の事例もいくつかご紹介しながら、日本のベビー休憩室の将来について考えてみましょうか。

「授乳室」でも進む日本の“ガラパゴス化”?ママを支えるシステムやデザインって?

仲:外国の調査はまだ始めたばかりで、全貌がはっきりしているわけではないのですが、参考例として。

例えばシンガポールでは、大きな商業施設でも日本のような大きなベビー休憩室が設置されているわけではなく、個室が各階に配置されていました。

かなりのスペースを割いてオムツ替えも授乳もセットになった個室を並べている施設もあり、プライベートを大事にする傾向が強かったように感じました。

イギリスは、シンプルな個室形式が多かったですね。なかでも印象的だったのは、世界的な建築家ユニットとして知られるヘルツォーク&ド・ムーロンが設計したロンドンのテートモダン(美術館)でしょうか。全体のデザインと統一した授乳室があって、さすがだと思いました。

こんな風に各国のベビー休憩室に飛び込んでみて、私がいま持っている仮説は「日本はガラパゴス的に授乳室が充実しているのではないか」ということです。

授乳室が充実し過ぎてしまっているのも、あまり良い傾向ではないかも、とも思っています。