いきものがかりというグループよりも、いきものがかりのメンバーのほうがはるかに先を行ってる

――誤解を恐れずに言うと、という話になるんですが、実はいきものがかりに対して、いわゆる新しさというものをそれほど求めていないんじゃないかと思うときがあるんですが……。

水野 わかります。

――例えば“15周年は10周年のときより何かが新しく更新されていないといけない、というわけでもないんじゃないか?”とか、“いわゆる新しさを追いかけるのとは違う、キャリアの積み方があるんじゃないか?”とか、そういうことを考えることはありませんか。

水野 めちゃくちゃありますよ。僕も誤解を恐れずに言えば(笑)、いきものがかりというグループよりも、いきものがかりのメンバーのほうがはるかに先を行ってると思います。

――なるほど!

水野 いきものがかりという“場”は多くの方に愛されているし、そこで求められているのは海を照らす灯台のように、ずっと同じ場所で変わらず光を放つということだろうと思っているんです。で、スタンダードを目指すグループというのは、そういう一面を持たないといけないと思うんです。

しかも、それを目指せるグループとそれが叶わないグループがあって、目指せるグループというのはすごく幸運だと思うんですよね。だから、それを頑張ることが素晴らしいことであるのを、僕ら3人は誰よりも承知していると思います。

それがどれだけ尊いことかというのは誰よりも理解していて、だから頑張っているんですけど、ただメンバーは歳をとっていくので、その過程で経験も増えていくし、視野も広がっていくんですよね。そこで、自分の人生は一度きりしかないから、“これでいいんだろうか?”と思う場面もたくさんあるんですよ。

だから、新しいことをやりたいと思ったり、もっと視野を広げたいと思ったりするわけで、そのことといきものがかりをやっていくこととのバランスをメンバーそれぞれがどうとっていくかということが、これからはすごく重要になっていくと思います。

――独立して新体制になった今は、そのバランスのいいところを探すことを新しく始めて、それが進んでいる状況だということでもあるわけですね。

水野 ホント、何が正解なのかわからないんですけどね(笑)。僕らよりもはるかに「国民的」という形容詞がふさわしいアーティストはたくさんいらっしゃいますよね。そういう方たちのことを「○○も昔はこうだったから」と教えてくださるスタッフの方がけっこういて、僕はそれがすごく嫌だったんですよ(笑)。

だって、そういうすごいアーティストの方々と僕らが同じであるはずがないし、時代も違うから見てる景色も違うわけですよね。比べても意味がないし、だから参考にもできない。僕たちは僕たちで自分たちの物語を作っていくしかないから、ずっと未知の物語ではあるんですよね。そこで、試行錯誤しながら、また葛藤もしながらやっていったら、何か違うものが見えてくるのかもしれないですね。やっぱりマンネリだねって、すごく嫌になっちゃうかもしれないですけど(笑)。

――それぞれが自分の人生を生きることが大事、という「きらきらにひかる」のテーマがこれからもずっと意識されることになりそうですね。ありがとうございました。

■いきものがかり・水野良樹に聞く“リスタート”。みんなが“幸せ潔癖症”な時代へ届けたいメッセージ【前編】

プロフィール

水野良樹(いきものがかり、HIROBA)

1982年生まれ。神奈川県出身。1999年に吉岡聖恵、山下穂尊といきものがかりを結成。2006年に「SAKURA」でメジャーデビュー。作詞作曲を担当した代表曲に「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。グループの活動に並行して、ソングライターとして国内外を問わず様々なアーティストに楽曲提供。テレビ、ラジオの出演だけでなく、雑誌、新聞、webなどでも連載多数。テレビ朝⽇系⽊曜ドラマ『未解決の⼥警視庁⽂書捜査官』主題歌「きらきらにひかる」を8月31日に配信限定シングルでリリース。

イベント情報

「いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! ~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~」
2020年09月19日(土)18:00~
※アーカイブは開催終了後から2020年09月20日(日)22:00まで。