いきものがかりはこの4月、デビュー時から所属していた事務所を離れ、自分たちのマネージメント・オフィスを設立して、新しい活動をスタートさせた。が、その矢先、コロナ禍に見舞われ、思い描いていた展望は少なからず修正を余儀なくされただろう。

ここでは、リーダーの水野良樹に、この状況下で感じたこと、そして考えたこと、そしてその先に見据えるグループの未来について聞いた。インタビュー後編は、919日に開催するデジタルフェスのこと、その先の展望についてお届けする。

オンラインを使って、何か新しいことを考えつくには相当やらないとダメだと思う

――4月からの活動を振り返ったときに、以前よりもデジタル展開が勢いを増してますよね。

水野 そうかもしれないですね(笑)。

――それは、意識してのことですか。それとも結果的なことですか。

水野 それは、どちらもあります。意識的にやろうと思っていたら、こういう状況になって、よりそこに集中できるようになったという面もありますから。今は、ツアーをやってたはずですが、それがなくなってデジタル展開に注力できるようになって、いろいろトライ・アンド・エラーもできて、それでますます展開できているという感じですね。

――トライ・アンド・エラーを積み重ねるなかで気づいたことはありますか。

水野 やっぱり、すべての層に届くわけではないんだな、ということは感じました。そういうものに慣れている層というか世代があって、でも紙のファンクラブ会報を大事にされている世代もいらっしゃるし。「いきもば」というモバイルのファンクラブも始めたんですが、そこではデザインを変えたりメンバーのメッセージの表示を変えたり、というふうに微修正を繰り返していて、それもやっぱりやってみて気づくことが本当に多いんですよね。

――そういう試行錯誤を積み重ねているなか、9月19日には「いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! 〜リモートでモットお祝いしまSHOW!!!〜」という配信イベントが開催されます。

水野B Sいきものがかり』という番組をB Sフジでやらせていただいていて、BSフジも20周年ということで、同い年が集まっての企画という感じなんですが、デジタルでの配信ライブというのは、もう様々な取り組みが行われていますよね。演出競争みたいな感じになってきてる感じも若干ありますけど(笑)、いろんな演出が展開されるのは素晴らしいことだと思うんです。

ただ、その一方には普通にやるライブもあっていいと思うし、僕らが尖ったことをやってもしょうがないという気もするし。オンラインを使うということをテコにして、何か新しいことを考えつくには相当やらないとダメだと思うんです。

――それこそ、トライ・アンド・エラーを重ねることが必要ですよね。

水野 そこが主軸になってないとできない、というくらいのことだと思うので、いきものがかりはそのフィールドで闘うタイプではないんじゃないかなとは思うんです。例えばサカナクションにはなれないと思うから。だから、テレビという間口からスタートしたイベントとして何かひとつ提示できないかなということで、お笑い芸人の方に出ていただいたり、番組に出てくださったアーティストの方々と一緒に演奏してもらったりして、やっていこうかなと思っています。

――デジフェス以降の予定についても聞かせてください。新曲、あるいはニューアルバムのリリースはありそうですか。

水野 とりあえず、秋はどんどん新曲を作っていくことになると思いますよ。年明けに、延期になっているツアーがやれるかどうかというのが大きなトピックにはなるんですが、いずれにしても曲はどんどん作っていこうと思っています。

吉岡の声に見合う曲を書けるのかというプレッシャーは感じている

――ちなみに、YouTubeのオフィシャルチャンネルでは、これまでに発表された全てのミュージックビデオがフルサイズで公開されましたが、このタイミングで自分たちの音楽的な積み重ねを振り返ることになって、いきものがかりの音楽の成長や進化を水野さんは感じるところがありますか。

水野 う〜ん……、あるんですよ。それが進化と言えるのかどうかはわからないですけど……。僕自身は、曲作りについて確実にデビュー当時よりも上手くなってると思うんです。

でも、上手いということには功と罪と両方あって、デビュー当時と比べればはるかにできることは増えているから当時は書けなかったような曲も書けると思うけど、逆に当時できないなりにがむしゃらにひねり出したメロディの強さを感じるところもあって、そういうものを今の僕が書けるかと言えば書けないものもあると思うし。

つまり、今の僕が持っていない輝きを20代前半の僕は持っていたりもするので、そこがまぶしく見えたりもします。それとは別に、吉岡(聖恵)の歌が力強くなったということがありますよね。

ーー曲ごとに歌の表情がどんどん豊かになっているとあらためて思いました。

水野 技術的にもめちゃくちゃ上手くなったと思うし、歌うことに対する覚悟の持ち方もデビュー当時とは全然違うから、確実にシンガーとして成長していると思うんですけど、それだけじゃなくて吉岡の声というものをみなさんに知っていただけたということがすごく重要だと思っているんです。

あの声を聴くと、“あっ、いきものがかりだ”と思ってもらえるアイコンになってると思うし、それは作品が伝わっていく上ですごく重要な環境だと思うんですよ。だから、あの声で歌われるメロディを書くということの責任があるということでもあって、それは15年前には感じていなかったことですよね。

――声を聴くと誰もが“いきものがかりだ”とわかるという、すごいアイコンを抱えてしまったことの困難を感じることはないですか。

水野 ネガティブにはまったく捉えていないですけど、それに見合う曲を書けるのかというプレッシャーは感じています。僕がもっといい曲を書けば、彼女の魅力がもっと伝わるし、いきものがかりという存在ももっと広まるし、多く人に楽しんでもらえるというチャンスを与えてもらっているのに、それに僕は応えられているのか?っていう。

吉岡にしても、僕や山下(穂尊)の曲に対してプレッシャーというか責任みたいなものを感じていると思うんです。そういう関係性がお互いにいい緊張感をもたらしているとは思っていて、その緊張感があるからいきものがかりは保っているような気もするんですよ。「もっと別なことをやりたいよ」みたいな、変な色気が出てこないっていう意味で(笑)。僕ら3人よりも、周りの人のほうが“いきものがかり”というイメージをすごく大事にしているから、その人たちと向き合うときのほうがしんどい、という場合もありますね。

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