咲坂作品はアニメになっても大人世代も青春を追体験できる
『ストロボ・エッジ』、『アオハライド』に続く、「咲坂伊緒 青春三部作」の最終章、『思い、思われ、ふり、ふられ』。先んじて公開されていた実写映画に続いて、アニメによる映画も公開される。
『ストロボ・エッジ』は実写映画化、『アオハライド』は実写映画化、TVアニメ化されているが、本作は2作とも映画という、あまり類をみない企画となっている。原作者である咲坂も最初にこの企画を知った時は、驚いたという。
「このお話をいただいたときは、光栄だなと思いました。アニメ版と実写版、それぞれ違う形の映画で、自分の作品を伝えられる機会なんて、そうそうないですから」同じマンションに住んでいる、恋愛に奥手で夢見がちな由奈と、恋愛に対してドライで現実的な朱里。そして、朱里の義弟の理央、由奈の幼馴染の和臣。4人それぞれの想いが交錯していく、“全員片思い”のラブストーリーだ。
繊細な心理描写に定評がある咲坂作品だが、アニメになっても、10代の揺れ動く気持ちを丁寧に表現しており、今現在青春真っ盛りな10代だけでなく、大人世代にとっても青春を追体験できるような仕上がりになっている。
本作の原作者である咲坂も、「アニメでしかできない表現を楽しんで欲しい」と太鼓判を押す。
「例えば、由奈にとって大切な“絵本の中の王子様”のシーンも、まるで夢みたいな色味で、漫画では描けないような表現をふんだんに取り入れてくれました。絵が動く、声や音が吹き込まれるのはもちろんのこと、オリジナルのシーンもあって、原作者としては新しいエッセンスが入っていたのも嬉しかったです」
切なくも優しい読後感が原作の魅力。それをアニメーションにするにあたって、脚本段階で打ち合わせを行ったという。それは「キャラクターを誤解してほしくない」という想いからだ。特に朱里の一見サバサバしたキャラクターは、連載当初は読者から誤解を受けることもあったそうだ。
「もちろん、ストーリーが進むにつれて誤解は解けるように描いてはいたけれど、“わかってたけど、こんなに?”という。描いている側としては、朱里に申し訳ない気持ちになったんです。アニメでも、声優さんの声のトーンひとつで、観ている人の受け取り方が変わってしまうと思ったので、事前に脚本家の吉田恵理香さんとすり合わせをさせてもらいました」