タカラジェンヌとしての“品格”を最後まで大事にしたい
2007年に宙組に配属され、新人公演やバウホール公演で主演を務めるなど、早くから注目を集めてきた愛月。一番最初のターニングポイントは2015年の『TOP HAT』で、初めて三枚目の役を演じたことだという。
「三枚目をやったことでお芝居の感覚がさらに開けました。役者として作品に必要である存在になりたいとか、作品の中で存在感を残せる役者になりたいと思い始めたのはその頃です」。そして2019年2月、専科へ異動したことを機に、自身の意識が変化した。
「宙組時代は、本当にいろんなトップさんから学ばせていただくことができ、とても貴重な経験でした。ただ、上級生になってもいつまでも下級生感が抜けず、自覚が足りなかったのではないかと。専科のお話をいただいた時は辛い思いもありましたが、専科時代にさまざまな組の下級生と接することで、私の姿を見て学んでくれている後輩たちもたくさんいるんだということに気付き、上級生としてもっといろいろと見せていかなければという自覚が生まれました。もっと自信を持っていいんだと」。
さらに専科への異動から9か月後、星組へと異動。「星組に異動した時点で自分の中で退団を決めたので、もうやるしかないし、悔いは残したくないと。周りからの批評などをまったく気にしなくなりました」。特に『ロミオとジュリエット』の“死”の役では、空気を一変させるような圧倒的な存在感で観る者の目を惹きつけ、大きな話題となった。
「自分のことをダンサーだとはまったく思っていなかったので、役をいただいたときは大丈夫かなと思っていましたが、お稽古場で初めて“死”として踊ったり表現したときに、演出の小池(修一郎)先生や組のみんなが “そこしか見れなくなる”とか“釘付けになる”ということを言ってくださって。宙組時代、『エリザベート』(2016年)のルキーニ役をさせていただいたときは、舞台で自由に存在することがすごく難しかったのですが、“死”を演じて、自由に存在することがこんなに楽しいんだと感じられたことが奇跡のように思います。今までのすべての経験が生かせたからこその“死”だったなと思います」。
紆余曲折がありながらも、常にタカラジェンヌとしての“品格”を大事に歩んできた。「品格を大事にしたいという思いは、下級生の頃から今に至るまで、微塵もブレることがありませんでした。それだけは自信を持って言えるので、最後まで貫き通したいです。星組の下級生にも、その思いを残していけたらいいなと思います」。
そして、応援してくれる人たちへ向けては「コロナ禍で直接触れ合える機会がなくなってしまいましたが、舞台から皆さまに感謝をお伝えできる場面がたくさんあると思いますので、感じていただけたらうれしいです」と言葉を残した愛月。愛月が突き詰めた男役を劇場で見届けたい。
公演情報
宝塚歌劇団星組
宝塚剣豪秘録『柳生忍法帖』 / ロマンチック・レビュー『モアー・ダンディズム!』
【兵庫公演】
2021年9月18日(土)~2021年11月1日(月)
会場:宝塚大劇場
【東京公演】
2021年11月20日(土)~2021年12月26日(日)
会場:東京宝塚劇場