大先輩のもと、ハードルの高い“研修”に挑む!

井上芳雄 撮影:塚田史香

――続いて「リーディングプロジェクト」について伺います。演出・出演の橋爪功さんとは、『謎の変奏曲』(2017)以来の共演となりますね。

ヅメさんとはあれ以来、家族ぐるみで仲良くさせてもらってます。大先輩も大先輩ですけど、全然偉ぶることのない大きな人。何かを教えるという感じの方でもないので、ご一緒すればするほど学ぶことがある気がします。

これ言い方難しいんですけど、僕にとってこの作品は、仕事ではあるんだけどワーキングホリデー……あ、ホリデーはちょっと違うな……“研修”みたいなものなんですよ(笑)。

もちろんお客様に観てもらうに値するものにはしなきゃいけないけど、演技を学ぶ場、インプットするための時間でもあるというか。ミュージカルだけをやっていても、お芝居は上手くならないというのが、自分に関する僕の持論。だからこういう機会があったら、ちょっと無理をしてでも参加したいなと思うんです。

『リーディングプロジェクト』公演チラシ

――井上さんが出演される第二幕の『船を待つ』は、橋爪さんが昨年、ラジオドラマで渡辺いっけいさんと読まれた作品です。今回は、井上さんが渡辺さんパートを担う形ですか?

と思いきや、ヅメさんパートなんです! 僕も最初、いっけいさんパートだと思って読んで「あぁいい話だなあ」と思ったんですけど、ヅメさんに何か考えがあるみたいで。

ヅメさんパートはヅメさんに合うキャラクターだし、役の起伏も激しくて……絶対難しいんですよ(笑)。ハードルを上げられた状況ですけど、だからこそ“研修”にはふさわしいですよね。

ヅメさんとはまだ、舞台の下見にご一緒させていただいたくらいなんですが、物語に合わせたチェロの即興演奏があったりと、もう演出プランも色々あるみたいです。

ヅメさんが凄いっていうのは分かるんだけど、具体的に何が凄いのかはいまだにつかみ切れてないところがあるので、それが知れるのも楽しみですね。

――さりげなくおっしゃいましたが、草月ホールを一緒に下見されたんですね?

たまたま時間が合ったというか、ヅメさんが行くと聞いて、じゃあ行こうかなってだけの話です(笑)。

でも草月ホールって、僕が20年くらい前に初めて自分のコンサートをやった場所なんですよ。初めてひとりで歌ったりトークしたりした場所に帰ってくるということで、図らずも原点回帰な感じもありますね。

ホールとしても舞台面も、大きくはないんだけどとても雰囲気があって、こういう場所だからできることがありそうだなと思っています。