音楽のおかげでいつも以上の一体感が
――北村を演じる上で意識していたことはありますか。
一番気にしなきゃと思っていたのはバランスです。ただの嫌な奴ではなくて、阿部(寛)さんが演じる成瀬の言葉によって変化をして、音楽隊の一員として頑張っていくんですけど、その中での彼の存在意義を大事にしたいと思いました。
映画を観てくださった方々に好きになってもらえなくてもいいんですけど、嫌いになれないくらいの感じになればと。
北村がツンケンした態度をするのは彼なりの理由があるんです。成瀬が自分がなりたかった刑事をやっていて、今は同じ境遇のはずなのに、そこに嫉妬心や恐怖心、憧れや尊敬という感情が混じってしまう。
だから成瀬を見る時の目も「こうやったら少し尊敬しているように見えるかな」とか、「こうやったら嫉妬しているように見えるかな」って、一つひとつ考えながらバランスを取っていたので、そこは難しくもありました。
――阿部さんとのシーンで印象に残っていることは?
僕、普段は車の運転をあまりしないんですけど、今回、運転するシーンがあったんです。一人で運転するだけならまだ緊張しないんですけど、その時は(成瀬幸子役の)倍賞(美津子)さんと(国沢正志役の)板橋(駿谷)さんを乗せるのですごく緊張していて。
そしたらたまたまその日に、控室で阿部さんと二人きりになったので、そのことを相談しました(笑)。「頑張れ」っておっしゃってくれました。
――(笑)。主演としての阿部さんはいかがでしたか。
現場に阿部さんがいらっしゃるだけで、キャストもスタッフも全員の士気が上がっていたように思います。最近僕、阿部さんと同世代の方とご一緒する機会が多いんですけど、阿部さんをはじめ皆さんめちゃめちゃストイックなんですよね。
少し先ではありますけど、自分が同じ位の年齢になった時、下の人たちに今の僕が感じているような感覚を持ってもらえるのかなって。そうなりたいけど、今の自分はどれくらいそのための努力ができているのかな?とか考えさせられました。本当にカッコいいです。
――現場の雰囲気はいかがでしたか。
めちゃくちゃ良かったと思います。かなり暑い中での撮影だったにも関わらず、キャスト、スタッフの皆さんがイライラするようなこともなくスマートな印象でした。現場全体が大人な印象がありました。
とにかく監督がずっとニコニコしていらっしゃるイメージがあって。真剣な表情をされる瞬間もあるんですけど、ニコニコの顔以外あまり見たことないと思うくらいマイルドでした。もちろんそれには阿部さんの力も大きく関わっていたと思います。
あとはキャスト陣の音楽隊のメンバーのことで言うと、音楽を一緒に作ったことも大きかったです。音楽って一つの作品を作っているような感覚があって。
映像作品も一緒に作っている感覚はあるんですけど、例えると見えないところで手を繋いでいるような感じで。音楽は楽譜があって、それをみんなでここまでという見えるゴールへ向かう。いつも以上に一体感は生まれたと思います。
他の作品でも現場に入る前にみんなで音楽をするか、スポーツをするかしてみたらいいと思います。団結力が生まれると思います。ただスポーツの場合は勝敗が決まるから、逆に殺伐とする可能性もありますけど(笑)。
――お互いに練習の進み具合を報告し合ったりもしたのでしょうか。
僕の場合は皆さんの方が上手だったので、教えてもらうばかりでした。ホントに皆さん上手くて、自分が参加していない曲だと、ただ普通にゆっくり聴いていたいなと思っていました(笑)。