奈緒さんに半分、身を預けるような感覚でお芝居をした

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――演じる上で意識していたことは?

三木監督には、HiHi Jetsの5人で出演したドラマ『全力!クリーナーズ』(2022年4月期放送)でも監督をされていて。

そのとき、たまたま昼休憩で僕が牛丼屋に居たら、監督もあとから来て、2人で一緒にごはんを食べたことがあったんです。もうその時点で、次にこの作品でご一緒することが決まっていたから、「今の現場はどう?」みたいな話から、新妻役についても話をしてくれました。

『全力~』はコメディだったから、わりと現場の空気を大事にしていて、セリフもしっかりそのまま言うというよりは、アドリブも入れて、パワフルさを出していこうみたいな感じだったんです。けど、「次はこうはいかないからね。今と一緒じゃ全然ダメだぞ」みたいなことをおっしゃって。

新妻がなぜその言葉を言ったのか。例えば、「コップを取る」という動きだったとしても、単に取るだけでなく、なぜ取ったのか。そういうことを全て計算し尽くせと。現場に入る前に計算し尽くして、現場に入ったらそれを1回、全部忘れろと。

そのぐらい叩き込んでおけば、現場で相手の方が、僕が何かをするための要因を起こしてくれるから、それに対して新鮮にリアクションをすればいいと言われました。

意味がわからないとは思いましたけど(笑)、言わんとしてることはわかるし、意図もわかったので、まずはそれを第一に頑張りました。そういうテクニックを一つ教えていただけたので、あとは気持ちだなと。それに関しては原作を読むしかないと思っていました。

僕はお芝居のスキルがないから、「こういうパターンはこうすればいい」というような回路が自分の中では出来上がっていない状態だったんです。

だからとにかく回数をこなす。原作を読んで、新妻を見て、自分が演じてるところを想像する。自分と新妻との共通点を探す。どうやったら新妻になれるのかを考え続けました。

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――最初に現場でお芝居をしたときはどうでしたか。

僕のクランクインが、確か、新妻が先生に呼び出されるというシーンだったんですけど、もうわからないことまみれで。

同じ映像作品ですけど、ドラマと映画の現場って違う部分も多くて。ドラマはわりとテンポ良く進んでいくけど、映画は一球入魂みたいなところがあったり。その空気感の中で、「僕、ここに居たら邪魔ですか?」みたいな、自分が居ていい場所もわからないような感じでした。

初めに奈緒さんお一人のシーンを撮って、そのあとに僕も一緒のシーンを撮るという流れだったので、少し自分の出番の時間よりも早めに入って、現場を見学したり、スタッフさんとかに挨拶をさせていただいたりして。それでいざ奈緒さんと対峙してみたら全然うまくいかなくて、何回もNGを出しました。

そのときに、奈緒さんが泣くお芝居をする場面があったんですけど、正直、僕はそれまでお芝居で泣ける人ってテクニックで泣いていると思っていたんですよ。けど、奈緒さんは涙を流すべきではないところでも泣いて、監督から「涙を止めて」って言われるようなこともあって。それがすごいなって。

きっと奈緒さんの中で先生の気持ちになったときに、その瞬間も泣けてしまったんだと思うんです。そのぐらい先生になっているんだろうなと。

僕はそういう奈緒さんにいい意味で飲まれて、奈緒さんに半分、身を預けるような感覚でお芝居をしたらOKをもらえました。僕を飲み込んでくださったことに感謝しています。

――大変だったことは?

新妻はぼそぼそしゃべるので、それをやっていたら「声が小さい」って怒られました(笑)。「音が拾えないからもう少し声を張ってもらえるかな?」って。確かに、声が拾えてなかったり、潰れてしまっていたりして、あとからアフレコで録り直ししたところがめっちゃ多かったです。

自分の声を聴きながら入れていくんですけど、自分でも「声小さっ」みたいなこともありました。それは少し大変でした(笑)。