風間俊介からの思いやり

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――風間俊介さんとの共演はどうでしたか。

風間さんが僕にしてくれたことがあって。早藤と新妻が一瞬、お互いを見合って、新妻がそこで何か嫌な予感を覚えるというシーンがあるんですけど、その時に早藤が先生に電話をかけて嫌な言葉を言っているんですね。

それは新妻には聞こえていないから、僕は知らなくていいところなんですけど、その見合うシーンが終わったあと、風間さんが監督に「電話をするシーンをもう一回、新妻の前でやってもいいですか?」って言って。

最初、僕はわけがわからなくて、何かが変わって、「このシーンも使うのかな?」って思ったんですけど、そういうことではなくて、新妻の早藤に対する気持ちを引き出すためにやってくださったんです。

僕は風間さんから5mくらい先の場所に立たされて、そしたら、現場のスタッフさんも風間さんの意図を察したのか、本番のようにスタンバイしてくださったんです。だから僕は余計に「えっ? 何のシーン撮るの?」みたいに混乱したんですけど(笑)、そのときの風間さんが本当に劇中に出てくるくらいの温度感でお芝居をしてくださって。

そのおかげで、僕は「マジで早藤、嫌な奴だな。許せない」という気持ちになれました。やっぱり、僕の意識の中でどこかに早藤ではなくて、風間さんと思っていた部分があったんですけど、そこで100%の早藤と思わせてくださいました。

その後のシーンは、より自分が新妻に近づけた感覚でいられて、早藤や先生に対する熱を引き出してもらえました。すごくありがたかったです。

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――風間さんとは空き時間などに何か会話をされましたか。

風間さんは現場ではすごくドライでした。挨拶をしても頷くくらいで、距離を取られていることを感じていました。会話も全くないですし、僕には風間さんがピリピリしているように見えていたんです。「僕、嫌われているのかな?」と。

そしたら、撮影が全部終わった瞬間からいつもの風間さんになって、夢の国の話とか、飛行機のマイルの話とかをしてました(笑)。僕が風間くんを早藤だと思えるように、いろんな気遣いをしてくださっていたんですよね。

そのおかげで、僕はずっと緊張感を持っていられましたし、新妻が早藤に対して抱いているような、抵抗感や不信感を、僕自身にも植え付けてくださいました。

カットがかかった途端、普通にお話をしてくれるようになったことも含めて、優しさを感じました。裏で仲良くみたいなことはなかったけど、それゆえに感じた優しさでした。

――このあと、舞台挨拶などのイベントでお会いする機会もあると思いますが、何か聞いてみたいことはありますか。

「あれって何だったんですか?」って聞きたいこともあるけど、さっき言ったように自分で気付けたので。それを訊くのは野暮じゃないですか(笑)。

なので、聞きたいことというより、風間さんに一方的にしゃべってほしいです。「演技とは?」みたいな、講演会を開いてほしいです。今回の共演のあと、風間さんと奈緒さんが出演されていた舞台(『恭しき娼婦』)も観させていただいたんですけど、お二方とも本当にすごいなって。

どうやったらそんな演技ができるのか、4時間くらいかけて聞いてみたいです。一問一答とかではなく、いちからじっくり聞きたいです。