俳優業にしっかりと臨んでいけたら

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――本作を経て、お芝居に対する印象に変化はありましたか。

この作品に臨むまでは、普段はグループ活動をしていて、他の4人がお芝居をメインにしていることもあって、「僕はバラエティを頑張ろう」と思っていたんです。

もちろん、今でもその気持ちもあるし、バラエティももっとやりたいんですけど、この作品を撮り終えてからは、「あれで良かったのかな?」とか、お芝居についてずっといろいろと考えるようになって。

それで、先日、完成作を観たときに、自分が取り組んできたことが形になったことに喜びを感じて、「これがもう少ししたら世に出て、大きなスクリーンで見られちゃうんだ」って思ったら、ものすごくうれしくなりました。

一方で、自分の演技に対しては「これはもっとこうしたほうが良かったんじゃないか」「ここはちょっと伝わりづらかったかも」とか、無限に反省点も出てきて、真剣にやればやるほど、こういう作業も楽しいんだろうなと。今まで向き合って来なかったからこそ、僕も俳優業にしっかりと臨んでいけたらいいなと思いました。

――大きな話題となるだろう作品ですしね。

猪狩蒼弥として、この作品に出演できたことはすごく光栄なことだったと思っています。まずこのキャストのラインナップの中に自分がいることがとてもありがたいです。僕の初の映画単独出演作がこれになると思うと、本当に素晴らしい機会をいただけたと感じます。

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

――猪狩さんはご自身の弱さにはどのように向き合っていますか。

僕は理屈っぽいので(苦笑)、自分の中で分析して、理論立てて考えていきます。自分の弱さとか、嫌な所をとかを理解して、「じゃあ、こうしよう」と。なので、あまり自分の弱さを感じること自体がなくて、そこは新妻とは違うと感じるポイントですね。

自分の醜さは出したくないんですよ、絶対に。それこそ、こうやって表に出る仕事をさせてもらっているので、醜さを出すことは美徳だとは思えないです。

自分の「ここがダメ」とかがわかっているならば、あとは直せばいいだけだから。直すためにはどうしたらいいんだろう?ということを考えて、自分の中で解決していくことが多いです。

そもそも僕はポジティブだし、自己肯定感も高いので(笑)、「俺、ダメだ」みたいに感じることが少ないとは思います。

――それで言うと、本作の現場で感じたようなことは珍しいことだったんですね。

はい。なのでこの撮影をしていた時期は、自分の中の価値観とか、いろいろ変わっていきました。何となく自分の中で「俺はやれる」って思っていた部分があったけど、一歩、自分が知らない世界に入ってしまったら、井の中の蛙だったんだなと。

でもそれを知れて良かったと思うんです。知れたということは、以前の自分よりもパワーアップしていることは確実だから。というように変換していきます(笑)。

ただ、まだ映画が公開にはなっていないので、世に出たときに「いいね!」と言っていただけたら、「良かったな」って思えるけど、「猪狩、微妙だったんじゃないか?」ってなったら、それはへこむと思います(笑)。


センセーショナルなシーンもある本作ですが、猪狩さんが言うように「幅広い人間の様相」を描いていて、観ながら自分の倫理観についても考えさせられるような、決して他人事ではない物語になっています。

そんな中で猪狩さんが演じた「新妻祐希」は、思春期特有の“揺れ”がある人物で、その揺れがとても繊細に表現されていました。万人が心から楽しめる作品だとは言えませんが、新妻が灯す希望を糧としながら、観ていただけたらと思います。

作品紹介

映画『先生の白い嘘』
2024年7月5日(金)より全国公開