オルタナティブな“家族のカタチ”を母・穂子さんが選んだ理由

――監督は映画『沈没家族』の公式サイトでも「母が沈没家族を始めたのは、大人一人子一人という状況で閉ざされた環境になったら自分が楽しくないし、自分が楽しくない状況でこどもとすごしていたら、それは子供にとってもよくないからという思いが強い」とおっしゃっていますが、多くのママも「密室」は母子にとって良くないと、感じてはいると思います。

「共同保育」は1990年代当時もオルタナティブ(型にはまらない)な家族の在り方として注目されましたが、お母様が新たな試みを、実行に移せた原動力は何だったと思いますか。

加納:穂子さん自身、働きながら専門学校にも行っていたので、とにかく「お金がなかった」ということもあると思います。「そうしないと育てられない」というサバイブ感もあったのではないでしょうか。

――息子を育てるためには「密室」を出なければならなかった? 赤ちゃんとママの空間から出ること、子どもを自分でない人に委ねることに、怖さはなかったんでしょうか。

加納:彼女はなんというか、世界を信頼していたのだと思います。

だから大層なことをやっている意識はなく、必要だから保育人を募集するビラをまくという行動をとった。危ない目に遭うんじゃないかとか、そういう不安とかは少なかったと思います。

「絶対みんな楽しんでくれるだろう」という、世界への信頼があった。「沈没家族」で育った僕は、そう思っています。

加納土監督登壇イベント【全日本おっぱいサミット】開催!

公共の場での授乳問題と密室育児を考える。

加納土監督もご登壇の【全日本おっぱいサミット】は、10月27日(日)10:30(10:15開場)~12:00、東京・表参道の東京ウィメンズプラザで開催されます。

「閉鎖環境は人の心と身体にどんな影響を与えるのか」を宇宙取材のエキスパート・林公代さんが、「ママの産後うつ・パパの産後うつ」を産婦人科専門医・村上麻里先生が解説。加えてワンオペ主夫として「密室育児」をした経験を持つ『おっぱいがほしい!』『タモリ論』等のベストセラー作家・樋口毅宏さん、さらに来場者も交えてディスカッションする予定とか。

加納監督にも新たな“家族のカタチ”の可能性を語っていただいて【全日本おっぱいサミット】で「密室育児」解決のカギが見つかるといいですね!

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。