── コンテンツもそうですが、プラットフォームが進化するきっかけになるかもしれません。

野村 やはりそこは双方に切っても切れない関係にありますので、良いプラットフォームがあればそこに向けてコンテンツは集まるでしょうし、さらにこれからはプラットフォームの個性というものがより重要になってくるのだと思います。

簡単にいってしまえば、音楽雑誌や音楽番組がそれぞれ違った個性を持っているように、プラットフォームもよりはっきりした違いが必要になるのではないでしょうか。

そうなれば、我々としても、表現方法をより進化させやすくなるでしょうし、やりたいことやアーティストのタイプに合わせて、出ていくプラットフォームを選択しやすくなる。

── アーティストは現在の状況をどのように受け止めているのでしょうか?

野村 もちろん一概には言えませんが、まずは取り組める表現の場が、オンラインを利用したプラットフォーム上になると思うので、そこで何ができるのかを模索していくことが始まりになるんでしょうね。そしてそれは、チャンスでもあると思うんです。

要するに、音源を作ってマネタイズする、ライブをやってマネタイズする、さらにもうひとつ新しい可能性が開けた。

そういう意味でもマネージメントが後押しして、課金システムを導入することが鍵となっていきますね。

── いずれにせよ、アーティスト活動における経済的原資をどのように確保していくか、というのが現実的な課題ということですよね。

野村 政府による支援があまり期待できない以上、業界の中で相互援助していくようなシステムを作らないといけないなと、かなり早い段階から思っていました。

そこで音制連、音事協、ACPCの3団体が集まって協議した結果、基金を立ち上げることにしました。

ライブエンタテインメントを助けたいと思っていただける企業や個人から資金援助を受けられるような受け皿を作ろうとしています。

ただそこには制度上の様々なハードルもあって、例えば阪神淡路や東日本の大震災の時のように、義援金を集めて被災地に持って行くという形ではなくて、自分たちでお金を集めて自分たちの業界を助けるという構図になるので、税制上の問題などがあって、そのあたりをクリアするのに思った以上に時間がかかっています。

── そこも、前回の文化の話と共通した部分で、日本ではまだまだドネーション文化が成熟していないということですよね。

野村 そうなんですよね。ひとつの寄付を募るシステムを作るのにも、いろんな制限があるんだなっていうのを実感しましたね。

── 大阪府知事の出口戦略が注目されましたが、ことライブエンタテインメントに関して、何がどうなったら元に戻るのでしょうか?

野村 それはもう、ワクチンが開発されるなど、医学的な解決策がすべてだと思っています。

自粛解除後にクラスターが発生した韓国のクラブの例ではありませんが、特効薬のない状態ではどうしたってウイルスの恐怖は消えませんからね。

── それにしても、もっとも早く自粛して、おそらく最後に活動再開となるという、ライブエンタテインメントの宿命は過酷ですね。

野村 もう、受け入れるしかないというかね(笑)。

けれどどうにか突破する方法はないものかと日々有志で頭をひねってますけどね。

── まずは、オンラインでの活動の場をいかに構築していくか、ですね。

野村 そうですね。そうやってある意味バーチャルな部分を追求していくと、必ずリアルなものの価値が浮き彫りになっていくと思います。

やっぱり家にいればいるほど外に出て行きたくなるわけだし。

どんな新しい生活様式になったとしても、実際に旅行に行って味わう感動や、ライブで体感する興奮は色褪せないものですよね。

そこが人間のプリミティブな部分だと思うんです。衣食住の隣には喜怒哀楽があって、それで初めて人間的な生活が成り立つわけですから。

だから希望は、いつだって我々の中にあるのだと思います。

新型コロナとエンタメの流れ

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2/29 大阪ライブハウス クラスター発生

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3/17 一般社団法人 日本音楽制作者連盟)、一般社団法人 日本音楽事業者協会、一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会の3団体と、ライブ・エンタテインメント議員連盟が協議

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