光畑:よく「泣いたらおっぱい」と言われますが、実は専門家によれば「泣く前におっぱい」がベストなんです。泣く前の欲しがるサインをキャッチして、または泣き始めにおっぱいというのが一番で、そのわずかなタイミングで授乳するためにも、赤ちゃんを待たせないで与えられるのがベターということが言えます。

授乳服を上手に活用すれば、そのベストのタイミングを外さずに授乳することもできるわけです。

そしてタイミングを逃さなければ、赤ちゃんが「おっぱいを欲しがって泣く」というシチュエーション自体がなくなります。おそらくこれが、お出かけするママにとって一番の安心材料となるのではないでしょうか。

――外出中に「赤ちゃんが泣くかも」という心配をしなくてもよくなる、ということですか?

先輩ママユーザーに学ぶ「授乳服」のメリット&活用術!

光畑:少なくとも「お腹が空いた」とか「眠たくて口寂しくて、おっぱいが恋しい」とか、「赤ちゃんが不安や不快感を覚えてママに甘えたくて」といった理由で「泣く」「グズる」というシチュエーションは、限りなくゼロにできます。

赤ちゃんが泣く原因として、ほかに考えられるのはオムツと急な病気くらいですから、後者はそれこそ“致し方ない”にしても、前者はお出かけ前に新しいオムツを穿かせておくことである程度の備えはできますものね。

授乳服のユーザーさんたちは、赤ちゃんがおっぱいを欲しそうな様子を見せ始めたらパッと抱き上げてササッと、それこそ1~2秒で授乳をスタートして、たとえ歩いている途中であってもそのまま赤ちゃんに「おいしく飲めるかな~?」なんて話しかけながら、スタスタと目的地へ向かっちゃうんです。

公共交通機関などで座れていればそれ以上に簡単でしょうし、席が空いていなくても、抱っこさえできれば、何の不自然さもなく授乳してあげることができるんですね。

だから移動もスムーズですし、赤ちゃんもすぐ満足できて安心だからグズらない。子連れだからといって、言い方はナンですが“悪目立ち”することがなくなります。

私が20年ほど前に、中央線でブラウスを開いて授乳した時のことを思い返してもそうですが……

  1. 赤ちゃんのお腹が空くorおっぱいが恋しくなるorママに甘えたくなる
  2. 赤ちゃんがグズる・泣く
  3. みんなが注目する
  4. ママがおっぱいを出す
  5. 「うわ~ぁ出してるよ……」
  6. 視線が痛いor目を逸らされている無言のプレッシャー

……思いっきり注目を集めてしまうこの“悪目立ち”と、周りに“気を遣わせている感”が、お互いの溝を深めているというか、双方の居心地をより一層よくないものにしていますよね。

赤ちゃんが“すぐ”に満足できれば、待たせることもグズらせることもなく、ママも不要な注目を浴びずに済むのです。

時々「育児と社会の共存を目指すのであれば、どうして授乳室を増やそうという方向で話をしないんですか?」と聞かれることもあって、私が「駅でもショッピングセンターでも50m置きにベビー休憩室があればいいんですけどね」と答えると、ギョッとされちゃうのですが(笑)

これは何も「50m置きに作れ」と言っているのではなく、赤ちゃんを待たせず、瞬時に対応できることが、ママにとっても赤ちゃんにとっても、周りにとっても最善という話で。

ベビー休憩室も、育児と社会の共存を支える存在のひとつですし、赤ちゃん連れのママが緊張を解くことのできる“オアシス”ともいえますよね。

とはいっても、そのオアシスにたどり着くまで、ママは重い荷物と赤ちゃんを抱えて大移動をしなければなりませんし、赤ちゃんはそこまで我慢をしなければなりません。グズって泣いてしまえば“悪目立ち”も避けられず、「うるさいなぁ」と感じる人だっているかもしれない。

「授乳服」は、そんなモロモロの問題を、全て、いとも簡単に解決してくれるのですよ。

――でも、そんなにいいモノが、どうしてママの“常識”や“必需品”として広まっていないのでしょうか。

光畑:「なんで?」って思いますよね。実はそこにも、大きなジレンマと、ママを取り巻く社会問題が潜んでいるのです。

※光畑由佳さんへのインタビューは「【特集:公共の場での授乳問題(4)】「自分の幸せをガマンしないで!」ママも社会も笑顔になれる、授乳プレッシャー解決法」に続きます。

【記事企画&取材協力】光畑 由佳(みつはた ゆか)氏 プロフィール

子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案するNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表理事&授乳服ブランド「モーハウス」代表。産後の新しいライフスタイルを提案し、授乳服の存在を国内に広めてきたパイオニアとして知られる。

社会と授乳、公共の場での授乳についても、自社で実践する「子連れワークスタイル」が国内外から注目され、女性のチャレンジ賞など受賞歴多数。

「暮らしの質」向上検討会など政府関係の有識者会議委員を歴任するほか、2014年に北京で、2016年にペルーで開催された「APEC女性と経済フォーラム」にも参加。内閣府男女共同参画担当大臣表彰(女性のチャレンジ賞)審査員。中小企業経営支援分科会委員。茨城県ユニセフ協会評議員。茨城県行財政改革推進懇談会委員。つくば市行政経営懇談会委員。茨城大学社会連携センター特命教授。筑波大学大学院非常勤講師。

著書に『働くママが日本を救う! ~「子連れ出勤」という就業スタイル~ (マイコミ新書)』。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。