大事なのは理解力と瞬発力、そしてもう一度見たいと思わせる演技力

二次審査の様子

── おふたりは、演者のどこにポイントを置いて見ていらっしゃったんですか?

眞形 単純にこの人は面白いのか、面白くないのか? この人をもう1回見たいと思うのか? ということですね。

それと、もうひとつは理解力。理解してない人は時間を使っても、素っ頓狂なことをずっと言い続けるだけになる。

別に犯人が誰なのか言い当てられなくても、間違っていてもいいんです。見たいのは、その人がどんな演技をしてくれるのか? なので。

でも、芝居のピントが合っている人と合っていない人は、やっぱり見ていれば分かるんです。

── 7人が何人かに分かれて“密談”をするところでも、その人のスキルが試されますね。

眞形 そうですね。上手く話を持ちかけられない人や先に話しているふたりの輪の中に入っていけない人もいて。

そこではコミュニケーション能力が分かるし、さっき言った“面白い人”に繋がるんですけど、誰と喋っても面白い人は実際にいます。

ここでも「マーダーミステリーゲーム」をやっていた人とやっていない人の差はあるかもしれないけど、やっている人は話の引き出し方が上手いし、話に入るタイミングが見えている。

しかも、上手い人はタイミングを計るのではなく、瞬発力でポーンって入っていけるんです。

二次審査より、密談の様子

桒山 僕も瞬発力と言うか、機転が利くかどうかが大きいような気がします。その役を生きていればちゃんと返せると思うんですけど、理解力がなかったり、瞬発力がないと“この状況は何だ? 分からない、分からない”ってなってリアクションがとれなくなってしまう。

そういう意味では、叩けば響く、何が起きても打ち返せる能力が要求されると思います。

眞形 いまの回で降霊術師を演じた女性も、ガヤの上手さが好評価のポイントでした。

「オマエは〇〇だ」って言われた時に「何で私なの?」って上手く返していたけれど、それが瞬時にできるのは物語にちゃんと入っていて、ほかの人の話を聞いているから。

台本がないのにちゃんとツッコミができるその能力を、僕は評価してあげたいですね。

桒山 台本があると先の展開が読めるけど、今回は実際にON AIRされる番組にしてもインプロビゼーション(即興芝居)の要素が強いので、瞬間瞬間に生まれる質のいいアドリブを重視したコンテンツになればいいなと考えています。

眞形 例えば「ちゃんと聞いてくださいよ!」って立ち上がるだけでも見え方が全然違うのに、やってない人もいるんです。

「いいですか、聞いてくださいね」って動きながら言うだけでも印象が変わるのに、それができない人もいる。

そこにはその人のセンスが如実に表れると思います。

どんなに上手な芝居にも勝てない“素”のリアクション

── 演技経験がある人とない人でも、そこは変わってきますね。

眞形 芝居をやっている人とお笑いの人はちょっと強いと思いました。アドリブが効きますから。

逆に見た目は綺麗でも芝居ができない人やアドリブが効かない人はさっきも言ったように情報を隠してしまうから話が転ばないし、爆笑したり、号泣しちゃうような展開にはならない。

“ここで、これを言った方がオイシイよね”とか“これを言うと、役の立場は不利になるけれど、面白い見せ場になるよね”という感覚が素人にはないんです。そこが大きな違いです。

── チームの振り分けによって、ポンテンシャルが低い人と組むことになる可能性もありますよね。

桒山 それもあると思います。組み合わせの妙ですね。

眞形 でも、組んだ相手が悪くても魅せられる人はいるんです。要は自分のワールドまで作れちゃう人。そういう人は強いですね。

桒山 例えば犯人役の人が、明かされたある真実によって固まってしまうくだりがありましたが、番組として放送する時には、そういう表情を1カット入れるだけで彼の動揺が伝わるし、深みに繋がる。

視聴者も真相が分かったときに“だから、彼はあのとき、あんな表情をしていたんだ!”と腑に落ちると思うんですよ。

眞形 これが普通のドラマと違うのは、誰かの告白によって状況が一変するところです。

ある人物の秘密や嘘が明かされたときに、どんな人間でも“素”になることが多い。その“素”のリアクションには、どんなに芝居が上手い役者さんも勝てないですよね。もはや芝居じゃない。

そのタイミングやリアクションの大きさが、「マーダーミステリー」をベースにした今回の番組を観たときの面白さになると思います。