憧れとシンパシーを感じる『BBC Proms』

角野隼斗 撮影/吉澤健太

――これまでクラシック以外のジブリやポピュラー曲もたくさん演奏されています。そこから角野さんのファンになり、角野さんをきっかけに、クラシックに触れる人もいますね。

僕はYouTubeとクラシックのコンサートの両方にかかわっている人間だから、そこは意識しますよね。もちろんジブリは好きだから弾いているのであって、クラシックファンを増やすために弾いているわけでは、もちろんないんです。結果論として、たまたま聴く人の音楽の幅を広げるきっかけになっていれば、それは嬉しいことです。

いま、秋に演奏するトーマス・アデスの『ピアノと管弦楽のための協奏曲』(日本初演)には6分の2拍子という見たことのないリズムが出てきたりします。ビートがあるので現代音楽としては比較的とっかかりやすくて格好いい。それでも普通のクラシックよりはとっつきにくい。

でも、僕をきっかけにアデスの音楽にたどり着いた人がいたら、少しでも楽しんでもらいたい。今回のProm4『Game & Cinema Prom』のプログラムも、ゲーム音楽と純音楽をボーダレスにつなげることによって、聴いた人にとっての、何かしらの「きっかけ」になれたら嬉しいなという思いがあります。

――現代音楽のほかに、クラシックと電子音楽を融合させたポストクラシカルなども最近注目されていますが、興味はありますか。角野さんが即興しているとき、ポストクラシカルも好き?…と、思い浮かぶことがあります。

めちゃくちゃ興味あって、実際にポストクラシカルの音楽性、精神性からはたくさんの影響を受けています。やりたいなと思ってアナログシンセも買ったんですけれど、まだまだシンセサイザーのことは勉強中です。

ニルス・フラーム(ポストクラシカルの代表的なアーティスト)のようなサウンドを作ってみたい、そこに自分のクラシックの表現力を組み合わせたら、もしかしたら何か新しいものが生まれるかも、などと思ったりはしているのですが、実現はいつになるかはわかりません。

――今回はリーディング・ナビゲーターとして、自分が演奏しない日にも「プロム・プレトーク」のなかで、出演アーティストとの開演前のトークイベントも予定されています。リーディング・ナビゲーターとして、BBC Proms JAPANに向けた抱負を教えてください。

「最上の音楽をより多くの人に届ける」というBBC Promsの理念や、イベント自体には、憧れとシンパシーを感じます。

BBC Promsには、ロックの夏フェスのような雰囲気もあって、クラシックのカジュアルな楽しみ方も提案しつつ、新たなプログラムも開拓していて、貴重な場になっている。理想的ですよね。その日本バージョンのリーディング・ナビゲーターに選んでもらえたのは、恐縮ですが、嬉しい。僕にできることは頑張りたいです。

BBC Proms

ヘア&メイク/MAIMI 撮影協力/Steinway&Sons 東京 コーディネート/竹本義就

プロフィール

角野隼斗(すみの・はやと)
1995年生まれ。東京大学大学院在学中にピティナピアノコンペティション特級グランプリを受賞。国内外でコンサートを行うかたわら、"Cateen"名義でYoutubeにてクラシック曲や自ら作編曲した演奏を配信。チャンネル登録者100万人超、総再生回数は1億回を超える。国内外のオーケストラとの共演、ジャズやポップスのアーティストとのコラボも行う。

公演情報

BBC Proms JAPAN 2022
2022年10月29日(土)~2022年11月6日(日)
会場:Bunkamura オーチャードホール(東京)、ザ・シンフォニーホール(大阪)

Prom4『Game & Cinema Prom』
2022年11月4日(金)19:00開演
会場:Bunkamura オーチャードホール(東京)
出演:角野隼斗(ピアノ)/東京21世紀管弦楽団

チケット発売日程
ぴあ先行(先着):~ 8/19(金)23:59
一般発売:8/20(土)10:00