“未完成”ということを大切に

© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

――“青年期の露伴”を演じる上で意識していたことは?

一生さんが演じられている“岸辺露伴”は、皆さんも同じように感じていると思いますが、芯もこだわりも強くて自分を貫ける人だと思うんです。ただ僕はその“青年期”を演じるに当たっては“未完成”ということを大切にしていました。

漫画家デビューしたばかりで、自分の絵や作品には自信はありつつも、自分を貫けない。映画の中でも描かれていますけど、今の露伴だったら言い返すだろう周りからの指摘を受け入れて考えるところがあります。その出来上がってない感じですね。

あとはやはり奈々瀬(木村文乃)との出会いは大切に演じました。今の露伴の記憶の中に残っていて、それを思い出すことで今回の映画の物語が動き出す、そのくらい重要な経験で、不思議な体験だったと思うので。

© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

――“未完成”なところはどのように表現しましたか。

普段から僕はお芝居をする上で、「こういう言い方にしてみよう」みたいな考え方はしていなくて、演じる役の気持ちになって、そこで発せられたセリフがその役そのものなんだと思っているんです。

だから意識的にやっていたことではないんですけど、完成作を観たときに、一生さんが演じられている露伴よりもだいぶ早口だなって。自分が演じていたときに感じていた以上に早口になっていました。

これは誰しもそうだと思うんですけど、ゆっくりしゃべることって自信がいると思うんです。普通にしゃべっているとつい空間を埋めたくなりますよね。それをしないでいられるのは、自分というものを持っているからだと。そういう意味で、今の露伴よりも未熟であることを早口が表現しているのかなと思いました。

© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

――奈々瀬とのシーンでは、露伴が敢えて“ヘブンズ・ドアー”(※露伴が持つ“特殊能力”で、人の心や記憶を本にして読むことができ、そこに指示を書き込むこともできる)を使わないという場面が描かれます。原作でも重要なシーンの一つですが、演じるときはどんな想いがありましたか。

露伴の葛藤を感じました。(心を)読むことができるのに読まなかったということに、いろんな想いが込められているので。1回は読もうとするけど、「今じゃない」ってとどまるのには、「見たくない」という感情もあったんだろうと思っていました。