真面目にやったことが面白く見える

――特にどの辺が大変でしたか。
板垣:エキストラの方の人数もすごく多いのに、その人たちがギュッとしてみんなで動くから、ちょっと酸素が薄くなってるんじゃないかと思うほどで(笑)。
加藤:絶対に薄かったと思う(笑)。(劇中で赤血球が)運んでる酸素ボンベを吸いたいぐらいだったよね?
板垣:画面に映し出されている僕らの表情は、リアルな苦悶の表情です(笑)。(完成作で)あの場面を観ると、撮影当時の記憶が蘇ってきました。

――観る側からすると、そこが笑えるんですけど(笑)。
加藤:それが武内スタイルですね。「これ、面白いでしょう?」というふうにやるのではなく、全部本気で、真面目にやったことが面白く見えるという。だから、笑っていただけるのは正解だと思います。
ブルーバックでの撮影日は、朝から深夜までずっとその場所に居て、休憩中も外に出ることがほとんどなかったんです。そんな中で、武内監督の作品の特徴でもあるテンションの高さとか、説明セリフをテンポ良く言わなくちゃいけないこととかもあって、本当に大変でした。

――ブルーバックで撮影したシーンを完成作で観たときはどう思いましたか。
加藤:「CGが入るとこんな感じになります」みたいなイメージは、事前に共有していただいていたので、「ここに大きな提灯があるんだな」とかって思いながら撮影はしていたんですけど、実際に出来上がったものを観たときは感動もありました。
僕らのシーンって、他の共演者の方々からの注目がわりと高くて。キラーT細胞役の山本耕史さんからは「肛門のシーンがどんな感じか見たい」って連絡が来たので、モニターを撮って送りました(笑)。

――それぞれ新米赤血球、先輩赤血球を演じる上で意識したことはありますか。
板垣:武内監督の作品は、大真面目にやることでそれが面白く見えるので、普段の人間を演じるときと変わりなく、人間的な感情を持って演じました。
新米赤血球は茂さんのブラックな体内の環境で疲れ果てて、日胡ちゃん(芦田愛菜)の体内に移ったあとも、自分が働く意味や、頑張る意味を見出せずにいる。そういうことって普通に人間が生きていたら感じることもあるだろうし。だから細胞ではあるけど、あくまで人間として捉えました。
新米赤血球は何だかんだ根はちゃんとしていて、だからこそ、周りからの影響をもろに受けて心身ともに疲弊してしまうけど、それは彼の素直さでもあると思うし。頑張り屋のところもあるし、そこは魅力だなと思います。
加藤:新米くんの成長物語でもあるよね。僕は(下川信男役で出演した)『翔んで埼玉』のときと近い感覚がありました。先輩赤血球はブラックな環境で働いているけど、それに抗うわけでもなく、この中で生きていかなくちゃいけないんだという気持ちを持っていました。
あとはりーくん(板垣)を大好きになるってことも大事にしました。その気持ちはブレちゃいけないと思っていたけど、(新米赤血球役を板垣が演じたことで)自然と体が動きました。(先輩赤血球が新米赤血球に対して)恋に落ちるようなシーンがあって、それは撮影期間の最後に撮ったんですけど、最初に撮っても問題ないくらいでした(笑)。