やっぱり僕はプレイヤーだなと思います

撮影/河井彩美

――劇中では、彼方に対して、例えば、家族や友人の存在とか、何に興味があるのかとか、そういうディテールが描かれていません。観客はそこを想像しながら観ていくと思うのですが、演じる側としてはどう捉えていましたか。

確かに、そこに関しては観てくださる方に委ねているのだと思います。匠海の中でもそこまで限定していなかったと思うし、というか、今回に関しては大事な要素でもなかったのだと思います。彼方と星野との裏表の関係性であったり、2人のもっと自分の中のことのほうが大切というか。

僕に関して言えば、彼方の感情というより、日向くんが出すものをいかにキャッチするかが大切だったので、現場に入る前に準備しようと思っても、結局、彼が何をしてくるのかがわからないし、考えたとしても、たらればみたいなことでしかなかったから、正直、やりようがなかった部分でもありました。

日向くんとは今回が初めましてだったんですけど、初めて会ったときに、彼から出るエネルギーを感じて、想像外のことをしてくるタイプなんじゃないか?という感覚があったんです。

もちろん、脚本を読んでいる時は、多少、考えることもありますけど、結果、現場に入ったら、それは忘れるので。とにかく、鮮度であったり、普段ではできないような形を整えてくれている現場だったので、その中にいかに存在するか、生きるかという部分に力を入れていました。

結局、想像通りに本番が遂行されたシーンなんてないし。僕はその場で感じるものを逃したくなかったし、尋常じゃないくらい、いろんな要素が存在した現場でした。そういう意味ですごく楽しかったですし、フレッシュでした。匠海がプレイヤーでもあることの良さや経験値がふんだんに活かされた現場だったと思います。

撮影/河井彩美

――完成した作品として観たときはどう思いましたか。

僕はやっぱりどこまで行っても観客視点にはなれなくて。特に、最初は。とにかく自分が出ているものを観るのが苦手なんです。けど、この作品に関しては、比較的その感情が最小限だったので、客観的に観れた部分もあったんですけど……でも、これからな気がします。

この作品自体が伝えたいものを感じるのには、もう少し時間なのか、何かが必要な気がします。もう少しフラットに観られるようになったときに、感じられるような気がするので、今はまだわからないです。

――今回の経験は大きかったですか。

刺激はすごくありました。自分たちより少し上の世代の俳優さんだと、監督もされている方もいらっしゃいますけど、同世代はまだまだそういう存在が少ないし。プレイヤーとして一線で活動しながら、監督にも挑戦するというのは、匠海が先陣を切っているのかなと。友達が現場の監督として存在しているという光景は忘れることはないでしょうね。きっとこの経験を忘れることはないと思います。

けど、それに影響されて僕が彼と同じことをできるか、したいかと問われると、逆に間近で見たからこそ、これではないのかなとも思いました。まあでも……いつか気が変わって、全然真逆のことを言っているかもしれないですけど。ただ、現状、僕は同じことはできないなと思いましたし、やっぱり僕はプレイヤーだなと思います。