冬組『to bloom…』(from『First WINTER EP』)
冬組が歌うリードトラックは、ゆっくりとしたテンポのバラード曲。歌詞もキャラクター性を押し出すというよりは、心理描写に踏み込んだ内面性の強いものとなっています。
作編曲の担当は、Elements Garden所属の末益涼太さん。同チームが音楽面を担当している、まねきケチャの楽曲などで、アイドルファンにもお馴染みのクリエイターです。
何はなくとも、メロディの美しさが際立つ曲で、バラードもののキャラソンの王道ともいえる堅実な作りが目を引きます。
豊永利行さんに柿原徹也さん、佐藤拓也さんというソロデビューも果たしている人気声優を有したユニットということで、歌唱力も抜群。"良いメロディ"と"良い歌声"という、これ以上ないほどにシンプルな武器で勝負している楽曲であり、それらが何よりの魅力となっています。
同時収録されている『Don’t cry…』と『Keyword』もユッタリしたテンポで歌の力を感じさせます。一方で、高遠丞(演:佐藤拓也さん)のソロ曲では、R・O・Nさんの提供曲で思いっきりロックなサウンドを聴かせてくれる……という楽曲の構成もおもしろい。
全体的に大人びた雰囲気というか、他のユニットに比べるとどこか余裕のようなものすら感じられますが、それ故に音楽を構成する各要素の魅力に向き合える作品といえます。
emon(Tes.)『A3! OST』
ユニットのミニアルバムと並べてレビューしたいのが『A3!』のオリジナル・サウンドトラックです。
ゲーム中に使用されているインストナンバー10曲と、歌モノの楽曲をインストアレンジを17曲。計27曲を収録した作品となっています。
ゲームの劇伴に関しては、四つ打ちによるスタンダードなテクノナンバーから、ファンキーなトラック、ちょっとダークな雰囲気のある楽曲まで、ゲームのサントラに相応しく多用で、猶且つ、メロディの線がハッキリしたサウンドが揃っています。
ゲーム音楽の特性上、どうしてもループさせる必要がある為、ひとつひとつの楽曲はジングル的なショートトラックになっていますが、いずれもメロが印象的なので、サントラの短い尺で聴いても不思議と耳に残る強さがあります。
また、おもしろいのがアレンジ曲の数々で、いずれも元曲のメロディを大切にしているが故に、DTMのシンプルな音数で再現されたそれらのナンバーは、各クリエイターの個性を際立たせています。
『A3!』の音楽の魅力は、多様で豪華なクリエイター陣の顔ぶれ。このゲームの為に集結した各々の"音"を打ち込みアレンジで聴くというのもゲーム音楽の醍醐味であり、ゲームならではの音楽体験といえるでしょう。
各ユニットが送り出す魅力的な楽曲と共に、サウンドトラックにもご注目ください!