フォトギャラリーアジカン後藤正文×origami PRODUCTIONS代表・対馬さん対談のフォトギャラリーを見る

4月7日の緊急事態宣言の発令の前に、あるステートメントが多くの音楽関係者に勇気を与えた。origami PRODUCTIONSによる無償楽曲提供「origami Home Session」そして同代表の対馬芳昭氏が設立した基金「White Teeth Donation」だ。

そこに素早く反応したのが、Gotchだった。アーティストとして、レーベル/マネージメント代表として、それぞれのやり方を貫いて交差した“音楽への思い”を語る、スペシャル・セッション。(前編)(中編)に続く最終回(後編)です。

個が問われている今、“多様性”についてどう捉えるのか?

── Shingo Suzukiさんのトラックを使って作った『Mirai Mirai』について伺います。これは、古川日出男さんの小説『ミライミライ』の中に出てくるリリックのポエトリー・リーディングですね。

Gotch 古川日出男さんの『ミライミライ』という小説が、最後、表現者たちに「ペンを取れ」「マイクを取れ」と呼びかけるようなニュアンスで終わるんですよ。

そこに、音楽というものは、歴史や社会に抗う、ある種の変革の力を持っているんだ、とういうようなメッセージが込められていると僕は読んだんです。

それは今、このタイミングで響くなと思ったんですよ。Shingo Suzukiのクールなトラックがそう思わせてくれたのも大きいですね。だからこれは言葉を読まないと成立しないだろうと。

そう考えると、もしかしたら『Mirai Mirai』の方が、僕の今言いたい強い思いっていうのは込められたかなっていう感じがしています。

対馬 その、トラックに寄り添ってくれている感じがすごく良かったですね。一方で『Stay Inside』の自然体な感じがあって、『Mirai Mirai』がそこと対照的なものになっているのがまたグッときましたね。

先にトラックがあって、そこにどう合わせていくかっていうことだったと思うんですけど、見事にトラックの良さと伝えたいメッセージのバランスが保たれていて、こっちはポエトリーリーディングか!っていう最高の驚きがありましたよ(笑)。そう来るんだ!っていう。

── 比較するのもどうかと思うのですが、星野源さんの『うちで踊ろう』に首相が乗っかってしまったあの動画が、どうしてもチラつくんです。

そういうことじゃないし……っていう拒絶反応とともに、この対談の最初にも出ましたが、音楽の理解のされ方というか扱われ方というか、そういうものを突きつけられた感がどうしてもあって。

Gotch こっち側がもっと意識的に関わらないといけないよなっていうのは、最初に言ったとおりなんですけど、あとはまあ、個が問われていますよね。「あなたはどうなのか」ということだけなんです、ほんとに。

首相があの動画で何をやったかもそうですし、あれを見たあなたがどう感じたかもそう。そこは多様性なんです。

ただ、「多様性」って言葉を使う時、みんな間違えるのは、「どうしてお前も一緒に反抗しないんだ!」とか、「反対運動に参加しないんだ!」みたいなニュアンスで用いられるけど、そうじゃないですよね、絶対。

参加しない、とか、公表しない、とか、そういうのも含めて「多様性」だから。本当はものすごく難しい言葉だと思います。自分とは考え方が違う人をどうやって包摂していくかっていうか、社会の中で認めていくかっていう。

その幅の分布図のことは考えないといけないんですけど。だから、僕がどうあるか、対馬さんがどうあるかってことを、俺たちはやっていくしかなくて。その集積が社会だから。自分の姿勢で見せるしかないんじゃないかな。そうなってくしかない。

ミュージシャンも自分がまず変わろうよ、みたいな。「あいつが言ってない」「お前が言え」じゃなくて、あなたがどういう発信をするかだよっていう。そう思いましたね、僕は。