――おっぱいを伴奏として「補完食」と共に続けてもいいんですね。

竹中:子どもが泣いて欲しがる度におっぱいをあげていると「3回食の習慣がちゃんとついていないからだ!」と責められて、「時間を空けて、無理やりにでもご飯を食べさせなきゃダメ!」という意見が、特に上の世代では、まだまだ根強いところがあります。

この10年で母乳の知識も広まったので表立って言う人は減ったものの、残念ながら、まだまだ無理解な人もいます。そこで追い詰められるママが増え、離乳食の悩みと卒乳の悩みが1才台、2才台、それ以降でも続いてしまう。

――そんな“口撃”にも悩むママたちへ、メッセージをお願いします。

竹中:焦らなくても、いつかは「おっぱいだけ」ではなくなる日が来ます。

「本当に大丈夫でしょうか」と心配する私に、当時かかりつけの小児科医の先生がおっしゃった言葉をご紹介しましょうね。

「駅の改札口に立って眺めてみてください。あ、あの人は離乳食遅かったな、なんて分かりますか?いつまでもおっぱい飲んでいた人だな、なんて見分けつきますか?分かんないでしょ?

みんなご飯食べるようになって大人になっているワケで、その意味では離乳食って必ず金メダルが取れると分かつているオリンピックのようなものなんです。心配要りません」

――必ず金メダルが取れると分かっているオリンピックですか?!

竹中:はい。それ聞いてびっくりしましたけど、妙に納得しました(笑)。

ママと赤ちゃんが「おっぱい大好き!」なのであれば、自信を持って母乳育児を続けて大丈夫ということです。「離乳食が進まないから断乳すべき」では決してありませんし、厚生労働省もユニセフも「母乳はどうぞ続けて」と言っているのですから。

もちろん状況はそれぞれですから、断乳や卒乳のタイミングなんて、ママと赤ちゃんが決めてよいのです。メロディと伴奏のように「その後もほかの食べ物を補いながら母乳を与え続けて育てる」中で、成長してゆくので長い目で見てほしい。

大切なことは、決して周りから「無理強いされることではない」ということ。

パパも周りの方々もどうぞ“新常識”への理解を深めて、あたたかく見守っていただけるといいな、と思っています。

【取材協力】竹中 恭子氏

母乳110番】代表・電話相談員。イラストレイター・ライター。1男1女の母。
おっぱいとだっこ』ほか、著書・共著多数。『おっぱいとだっこ』は第9回ライターズネットワーク大賞受賞、近年は水彩画家「武蔵野つきこ」として『授乳美人』作品シリーズも発表。公式ブログも。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。