「長所を見つけ、伸ばす」ことが子どもの将来に繋がる
では、子どもが不登校になったとき、将来のことを心配する親としてできることは何でしょうか?
桒原氏「不登校の原因だと思えたことや、子どもにとってマイナス要素だと思えるものの中に、子どもの良い面が隠されていることを考えてみてほしいと思います。
先ほどお伝えしたように、短所だと思えることは、別の角度から見れば長所です。
不登校の子の『ゲーム依存』を心配する親御さんも多いのですが、私たちがゲーム依存気味の子どもをカウンセリングするとき、頭ごなしにゲームを止めさせようとは決してしません。
代わりに、『この子は、ゲームを通してどういう気持ちを満たして(満たそうとして)いるのか?』『このゲームでどんな力を発揮しているのだろうか?』を考えます。
好きなゲームや遊び方の傾向から、その子の良い面が見つかることは実際に多いのです。
オンラインでチームで協力して何かを達成するのが好きな子は、仲間とうまくやる能力、協調性やリーダーシップがある子と言えるかもしれません。
コツコツと一人で何かを作っていくゲームが好きな子は、創造力がある、芸術的な才能に溢れる子かもしれません。
“子どもが熱中していることの中には、子どもの将来に役立つ特技や特性が隠れている”そう考えて向き合い、コミュニケーションを取っていくと、将来についてむやみに大きな不安を抱えることなく、前向きな考えを持つことも可能になります。」
知っておきたい「進路」と「職業」の情報
子どもの将来の可能性を広げるために、親ができることとして、もう一つとても大事なことを教えていただきました。
桒原氏「進路の情報、そして世の中にはどんな職業があるのかについて、親子でよく知っておくことは、子どもの可能性を広げる上でとても大切かと思います。
子どもの将来を心配する親御さんは、進路や職業について、『よく知らないから不安が増す』のですね。
レストランに行っても、メニューがなければ食べるものを選べませんよね。進路や職業も、知らなければ選びようがありません。
カウンセリングで進路のテーマを扱うときは、職業や仕事の情報(年収、資格など)について面白く紹介してくれる本を一緒に読むこともあります。
たとえ考えなくてはならないテーマだったとしても、できれば楽しく、穏やかに臨みたいですよね。
将来についてまだ決められていない時に「将来の夢は?」「やりたいことって?」というところから考えると行き詰まることが多いと思うのです。
「こんな進路(職業)もあるんだ」というところから始めていくことで、見えてくるものは必ずあるはずです」
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桒原さんが編集長として立ち上げた新サイト「ユリイカのタネ」では、不登校で悩む子が自分らしい人生を歩めるように、そして家族が穏やかな毎日を過ごせるようにと願いを込めて、日々役立つ情報が配信されています。ぜひご覧になってみてください。
<取材協力>桒原 航大(くわばら こうだい)
一般社団法人不登校支援センター理事/カウンセラー(公認心理師)
教育情報メディア「ユリイカのタネ」編集長
1987年生まれ 新潟県出身。教育大学で発達臨床コース生徒指導総合分野を専攻し、道徳性の認知発達について学ぶ。これまでに行ったカウンセリングは1万件を超えており、現在もカウンセラーとして活動中。小学生から大学生まで様々な年齢の生徒へ向けた自立支援活動や、職員の研修・育成、講演会などでも活躍。